交換される木材
帝国軍の河岸工事に必要な木材が、予定より一日遅れて届いた。運んできた商人は橋材を切り出す山で、王国向けの注文が重なっていたと説明した。木を買い占めれば商人は喜ぶ。しかし帝国内の家々が冬用の薪を手に入れられなくなる。
皇帝レオンハルトは、軍が使う木材と民が使う薪を同じ帳簿から分ける方法を命じた。樹齢の長い幹は橋材、枝や端材は薪にする。山の持ち主には伐採量の上限を示し、翌春の植林に払う費用を別枠で積ませた。クラウスは眉をひそめた。「戦が終わる前に木が育つものですか」
「終わったあとに必要な木だ」
王国側の古砦は兵を分散させていた。敵が臆病になったと見る将校もいる。皇帝はそれより、配置替えがきちんと伝わっていることを気にした。伝令が数日で広範囲を回り、混乱なく兵を動かす。通信路を保つ能力は、騎兵の速さだけでは測れない。
前線の工兵長から、夜間の作業に灯りが足りないとの報告が来た。灯火を増やせば敵に位置を知られる。皇帝は幕の内側だけを照らす小型の鏡を作らせ、試作品を三つ送った。工房主には軍人が使いやすい形を尋ねるよう指示した。
植林費を載せた帳簿に、商人は苗木を育てる人の賃金を書き足した。皇帝は署名を添えた。木を切る命令は今日届くが、苗木の世話を続けるのは何年もの仕事になる。新しい制度が最初の冬だけで途切れないよう、地方長官へ監督を任せた。
昼過ぎ、木材商人は支払いを受け取った。徴発ではなく買い上げだったため、彼は翌週の納入を自分で申し出た。橋を造る工事はまだ進まない。だが帝国軍の背後では、明日の材料を運ぶ人々が契約を守って動き始めていた。




