小さな砦の値段
王都から、関所を失った責任を問う手紙が届いた。宛先はダリオだが、セイルの助言にも疑問が向けられている。国王アルベルトは責める口調ではなかったものの、なぜ敵を追い返せなかったのか詳細を求めていた。
ダリオは王宮に説明するため、セイルへ同行を求めた。しかしセイルは丘を離れる前に、関所から戻った兵の記録を確かめた。退却時に負傷した二人は回復へ向かい、亡くなった者はいない。敵が得たのは石門と井戸。王国が失ったのは見張り位置と、峠を自由に通る権利だった。
王宮では廷臣が、英雄と呼ばれるSSS冒険者なら敵兵を一人で退けられたはずだと言った。セイルは怒らず、関所の道幅を説明した。自分が先頭で戦っても、後ろの兵は逃げる場所を失う。敵の兵を倒すことができても、峠の補給路までは作れない。
国王との会見が終わると、王宮の侍従がセイルを食事へ誘った。彼は断り、丘の救護所へ戻る馬車を選んだ。自分が答えられなかった問いを、何度も心の中で繰り返していた。勝てた戦いを避けたのかもしれない。しかし勝てたと証明するために、あの狭い門へ兵を戻すことはできない。
アルベルトはしばらく沈黙し、「関所を取り戻せるか」と尋ねた。「今すぐは難しいと思います」とセイルは答えた。国王は地図を見て、そこから後退した兵たちの顔を思い浮かべるように目を伏せた。
帰路、セイルは城門の外で小さな少年が旗を振るのを見た。失った旗を持ち帰った兵は、村の学校へそれを預けたという。布は泥で汚れていたが、子供たちが洗って干していた。国の名誉が何か、彼にはまだ一つの答えを持てなかった。




