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《適正》の軍師――SSS級冒険者は、天才皇帝の侵攻に挑む  作者: 竜太郎


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王国の負傷者名簿

レオンハルトは王国側の負傷者を含む捕虜交換の追加提案を受け取った。砂州の小競り合いで川へ落ち、帝国の救護所へ運ばれた王国兵が二人いる。王国は名前を照合し、帰還を求めていた。皇帝は二人の治療記録を確認した。


一人は歩けるが、もう一人は腹の傷が塞がっていない。返還を急げば移送中に死ぬ可能性がある。クラウスは人質として利用できると言った。皇帝はその言葉を聞き流さず、明確に退けた。「治療中の兵を物として数えるな」


軍医は負傷者本人の意思も必要だと進言した。王国兵は家族へ無事を伝えたいが、治療を終えるまではここに残ると答えた。レオンハルトは王国へ身元と状態を知らせ、回復後に引き渡す条件を文書にした。戦争のあいだでも、相手の家族が知るべきことがある。


負傷兵が自分の国の歌を口ずさんだと医務官は報告した。帝国の看護師は歌詞を知らず、声を合わせられない。それでも洗い立ての布を渡し、彼が眠れるよう灯りを下げた。レオンハルトはその報告を読み、相手を理解することと、すべての言葉を共有することは同じでないと思った。


同時に帝国兵三人が王国側へ収容されているとの情報も届いた。交換人数が合わないと役人は困った顔をした。皇帝は数を合わせるために治療を急がせるなと命じた。生きて戻るまでの時間を、帳簿の同じ行に押し込めるべきではない。


夜、医務官が病院の寝台を回った。王国兵は帝国の毛布を使い、傍には王国の紋章が付いた古い袋が置いてある。レオンハルトは報告を読んで袋を返すよう指示した。敵であることと、持ち主であることは同時に成り立つ。

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