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《適正》の軍師――SSS級冒険者は、天才皇帝の侵攻に挑む  作者: 竜太郎


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最初に渡った者

帝国軍が浅瀬へ兵を送り出したのは、夜明け前だった。レオンハルトは離れた高台から伝令を待っていた。先頭に立つのは工兵で、武器より長い棒を持って水深を測る。槍兵はその背後に続き、舟は少し下流で待機している。


水位は昨夜の測定より低い。しかし川底には新しい溝ができていた。先頭の工兵が足を取られたとき、すぐ隣の兵が手綱を伸ばして引いた。列が乱れ、進軍は止まった。サビーネは規定の水位には達していないが、現場判断で列を戻した。


クラウスは後退の知らせに顔を曇らせた。皇帝は報告の最後を読んだ。先頭の兵は全員戻り、溝の位置は杭で示された。進軍失敗と書かれているが、川に人を沈めず危険を知ることには成功していた。


浅瀬から引き返した工兵は、報告で自分の判断が遅れたと書いた。サビーネは足元が崩れた瞬間を聞き直し、隣の兵が手を出すまでの距離を測った。レオンハルトはその測定結果を受け取り、次の部隊の間隔を広げるよう命じた。失敗の報告を恥にすれば、二度目の失敗はもっと大きくなる。 将校の一人は、この結果なら損害なしと書いてよいのか迷った。皇帝は舟の補修費も訓練の記録に含めるよう伝えた。


レオンハルトは川を渡らせなかったことを評価しながら、別地点の舟を予定どおり動かした。ここだけに王国兵の注意が集まったなら、川上の浅瀬が一時的に薄くなるかもしれない。だが新しい浅瀬には、王国の見張り台から見えない小さな岸がある。


昼前、川上の小隊が王国側の砂州へ足を掛けたとの報告が来た。皇帝は歓声を上げなかった。砂州に立てても、そこから先は敵の領分である。兵が進める地面と、帰れる川を、別々に守らなければならない。

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