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《適正》の軍師――SSS級冒険者は、天才皇帝の侵攻に挑む  作者: 竜太郎


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干上がった見張り台

王国軍が使っていた葦原の観測台が、急に役に立たなくなった。川の水が引き、遠くの低木に視界を遮られるようになったのだ。兵は見張り台を高く建て直したが、今度は帝国から目立ちすぎる。セイルは現地で二つの問題を比べた。


砦に慣れた兵は高い位置を好む。だが舟の底の形を見るには、かえって低い位置が向いていた。セイルは台を建て直す作業を止め、目の高さだけの窓を葦の間に作らせた。強風ならすぐ倒れる簡素なものだが、川岸の変化を一日観察するには足りる。


その日の午後、帝国の舟が三隻現れた。二隻は下流へ向かい、一隻だけ元の岸へ戻った。王国兵は陽動と見て追いたがったが、セイルは舟に人が乗っているか確かめた。低い窓からは荷の影が見える。少なくとも一隻には兵がいた。


解体した柱の下には、越冬する虫の巣がいくつも付いていた。工兵は邪魔だと払おうとしたが、近くの子供が春には虫が出ると教えた。セイルは作業を止めず、残す材を少しずらすよう頼んだ。自然を守るためにすべてを止めることはできない。それでも一つの巣を潰さずに済むなら、理由なく潰す必要はなかった。


ダリオは川下の小部隊を待機させ、追撃しなかった。翌朝、帝国の舟は姿を消したが、湿った岸に重い荷を下ろした跡が残っていた。敵が何を運んだか分からない以上、判断を一つに決めきれない。


観測台の工兵は、作ったばかりの高い柱を解体して薪にしたいと言った。セイルは柱の一部を残し、雪解け後の水位標へ使うよう頼んだ。今見える高さと、数日後に必要な高さは違う。使い終えた材まで無駄になるとは限らなかった。

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