銅貨の重み
帝国の占領地では、新しい軍票を使う商店が増えた。一方で古い王国銅貨しか持たない住人は、市で物を買うたび相場を尋ねなければならない。レオンハルトは交換所を設けたとの報告を受けたが、そこに長い列ができている写真代わりの写生画を見た。
列の先頭には年寄りが多い。軍の書記が決めた交換比率は複雑で、額面ごとに端数が出る。商人は小銭を集め、住人は数え方を覚えられず、窓口は朝から閉まらない。皇帝は交換比率を統一できないかと尋ねたが、財務官はそれではどちらかに不当な損失が生まれると答えた。
レオンハルトは全員に同じ損を押し付ける案を退けた。少額の交換だけ手数料を免除し、窓口には分かりやすい表を掲げる。字を読めない者には数珠玉で示す。軍票の価値を守るための制度が、買い物のたびに人を困らせては意味がない。
交換所の役人は朝の列を減らすため、手持ちの銅貨を先に数える紙を配り始めた。だが書けない者は紙を握ったまま立ち尽くした。皇帝は紙をなくす代わりに、入口に手伝う人間を置くよう指示した。制度を簡単にしたつもりでも、使う人の手順が増えれば負担は残る。 役人は計算を教える札を木で作り、子供たちにも数を示してみた。目で見た数と手で動かした数が、ようやく一致した。
翌週、交換所の列は短くなった。しかし住民の間では、帝国が撤退したら軍票が紙切れになると噂が広がった。皇帝は保証の文書を出したが、その保証を誰が信じるかまでは決められない。
夜、レオンハルトは机の上に王国銅貨を置いた。裏にはもう占領地に掲げられていない王家の紋章が彫られている。貨幣を換えるより、人が明日の暮らしを信じるようにする方が難しかった。




