王国軍の軽さ
レオンハルトは峠の測量隊から、王国の斥候を遠くに見たとの報告を受けた。追跡を命じていないのに、隊の一人が独断で尾根へ登り、雪へ足を取られて救助されている。彼は報告書の端に、王国軍の足跡が少なすぎると記された一文を見つけた。
王国軍には重い装備を持たぬ者がいる。猟師か、山に慣れた斥候か。レオンハルトはその者がセイルかもしれないと考えたが、決めつけなかった。敵国の一人の冒険者をすべての謎の答えにしてしまえば、王国全体の技量を見誤る。
クラウスは峠から強襲する案を出した。測量隊が見つけた道は短く、王国の丘を側面から脅かせる。皇帝は地図へ補給車の幅を書き込み、雪の残る斜面を冬馬が上れるか尋ねた。現地の答えは否だった。歩兵は通れても、食料が後から来ない。
峠へ向かった測量兵は、地図の余白に村の犬が何度も吠えたと書き添えた。皇帝は最初、その一文を消そうとした。しかし犬が同じ方向へ吠えていたなら、人の移動を示す手掛かりにもなる。彼は余白を残させ、次回は吠えた時刻も記録するよう頼んだ。敵の姿が見えなくても、周囲の暮らしに変化は現れる。 山を測った兵も、足跡を残さず空を飛んだわけではない。重い装備を捨て、何を持って進むかを選んでいる。その差を調べるよう皇帝は伝えた。
「少数で峠を取るだけならできます」と将軍は食い下がった。「取ったあとに何を食わせる」と皇帝は問うた。クラウスは返事を探し、道の途中に倉を置く案を述べた。新しく作る倉を敵に見つけられれば、奇襲の利点は薄れる。
皇帝は進軍を保留し、測量隊へ村の木橋の強度を確かめさせた。自軍の歩兵に必要な道と、敵軍が逃げる道は同じでない。王国軍の軽い足跡は、峠を使えることだけを示していた。




