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《適正》の軍師――SSS級冒険者は、天才皇帝の侵攻に挑む  作者: 竜太郎


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白馬の代わり

皇帝直属の伝令隊で、長く使われた白馬が前脚を痛めた。クラウスは替えの馬を用意させようとしたが、伝令長は白馬以外では同じ道を走れないと言い張った。暗い林道の曲がり角を馬が覚えており、積雪の夜に何度も隊を助けたという。


レオンハルトは馬医の診断を求めた。筋を痛めた脚は、休ませれば歩ける可能性があるが、無理に駆ければ治らない。白馬を休ませても伝令網を止めずに済むよう、馬ではなく道の目印を増やすことになった。伝令長は不満げだった。


試走した若い騎手は、木の印を頼りに進んだ。しかし山の北側では雪が印を覆い、馬が道を外れた。若者は引き返して報告した。クラウスは失敗として扱ったが、皇帝は印の位置を直させた。現場で戻れた者の情報は、紙上で最短路を引く者の自信より確かだった。


白馬を世話する馬丁は、厩舎の前に来た皇帝を見て深く頭を下げた。馬丁は伝令網のことより、治りかけの脚に泥が付くのを心配していた。レオンハルトは馬丁へ治療の方針を尋ね、軍の都合で駆けさせないと告げた。馬丁はようやく笑った。馬を休ませる決断が現場に届いて初めて、その白馬の休養は始まった。


伝令長は白馬の首を撫で、昔その馬が敵の斥候を避けるため川へ飛び込んだ話をした。レオンハルトは聞きながら、道に残った足跡の深さを記した試走報告に目を通した。伝令隊の技量は馬一頭の記憶に預けきれない。


新しい経路はまだ完成しない。若い騎手が翌週も同じ林道を歩き、木の低いところに印を打った。白馬は厩舎で脚を伸ばしていた。軍は一度だけ、長年働いた動物の速さを当てにしない日を迎えた。

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