↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《適正》の軍師――SSS級冒険者は、天才皇帝の侵攻に挑む  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
131/228

地図にない階段

避難民の一団が丘へ戻ろうとして、軍の封鎖線に足止めされた。先祖の墓へ続く石段を修復したいという。セイルは場所を聞き、軍用地図を開いたが、石段の印はなかった。古い街道から離れた森に、山肌へ刻んだ百段ほどの階段が残っているらしい。


墓はすでに国境の射程へ入っている。許可すれば民間人が戦場へ近づく。拒めば冬の倒木が階段を塞ぎ、春の土砂が墓所を埋める。セイルは村人を連れて行かず、工兵二人と斥候に同行して道を見た。倒木はあったが、危険なのはその下の石の緩みだった。


年長の石工が段を一つ踏むたび、足音を聞いた。石工は森の中で村にいた頃よりよく話した。自分の祖母が子供の頃に作られた段だという。セイルは上り方を無意識に選び、緩んだ石を避けた。しかし石工は別の段へ手を伸ばした。「そこはまだ持つ。危ないのはこっちだ」重さを受ける場所を長年知る者の判断だった。


石工は帰り道、石段の上から見える村の煙について語った。家々の屋根がすでに避難で空いていても、遠くの炭窯だけは煙を上げることがあるという。セイルにはその違いが分からなかった。彼は石工へ尋ね、煙の位置を確かめた。軍の地図に人がいないと書かれても、村で働く人間が一人もいないとは限らない。


工兵が崩れやすい段だけを補修し、墓所は軍の監視範囲に留めた。村人が自由に往復できるわけではない。帰ったセイルがその事実を伝えると、年老いた女性は黙って頷き、墓に供える予定だった布を畳んだ。


彼女は礼を言わなかった。セイルも求めなかった。石段を保つことと、家族の墓へ行けることは違う。両方を望む人がいる限り、修復の報告書を一枚で終わらせる気にはなれなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。