硝子窓の議会
帝都の議会では、前線の窓硝子を民間から買い集める案が揉めていた。冬の野営所の治療室を明るくするためだが、都市の職人たちは交換用の硝子が不足すると反対した。レオンハルトは議場へ赴き、職人代表から割れた窓の修理に何日かかるか尋ねた。
軍の案は大量に集めれば安くなるというものだった。だが必要な形は治療室ごとに違い、切る途中で割れる硝子もある。職人は大きな板を買うより、古い窓枠を直して使う方が早いと説明した。
議員の一人が、皇帝の戦争のために誰もが我慢しているのだから職人も協力すべきだと叫んだ。レオンハルトは発言を遮らなかった。職人代表は「仕事はします。ただ、仕事を知らぬ者に期限だけ決められたくない」と答えた。
会議に来た硝子職人の袖には細かな白い傷があった。窓枠を外すときの切り傷だという。皇帝は保護具の支給を提案したが、職人は厚い手袋では小さな板を掴めないと答えた。どの手袋がよいか、軍が先に決めるべきではない。会議は職人たちが普段使う革の形を確かめる宿題を残して終わった。 職人代表は翌朝、使い古した革手袋を三組届けた。細かな仕事を守ってきた道具を、議員たちは初めて手に取った。
決議は予算の増額ではなく、工房ごとに修理能力を調べる委員会の設置となった。軍の病棟から外せる窓は外し、木の雨戸に替える。民間の家から硝子を奪わない。寒さと光の両方を守るには、すべてを同じ材で塞ぐ必要はなかった。
会議後、リディアは議場で皇帝が反論を控えた理由を尋ねた。「私の名で始めた戦なら、私への不満も国の声だ」と彼は答えた。ただし、反対があるから決断を止めるつもりもない。宮殿へ戻る道で、硝子屋の店先に子供の顔が映っていた。




