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《適正》の軍師――SSS級冒険者は、天才皇帝の侵攻に挑む  作者: 竜太郎


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皇帝が返した地図

帝都の会議に、山脈を越える秘密道の地図が持ち込まれた。提供者は元王国商人を名乗り、見返りに占領後の通行税徴収権を求めた。クラウスは進軍に使えると喜んだが、レオンハルトは地図の隅に描かれた小さな礼拝堂を見て手を止めた。


道は国境の峠を通る。礼拝堂は数年前の地震で崩れたはずだった。皇帝が指摘すると、商人は古い図を写しただけだと答えた。しかし積雪量や石橋の位置は新しいままだ。古い図と新しい噂を継ぎ接ぎして作った地図かもしれない。


レオンハルトは地図を返し、情報料を払う前に実地の照合を求めた。商人は怒り、帝国が貴重な機会を逃すと言った。「道があるなら、明日もそこにある」と皇帝は答えた。「ない道に兵を送れば、明日の兵はいない」


地図を持ち込んだ商人は最後まで自分の情報が正しいと言い続けた。リディアは詐欺として扱うべきか尋ねたが、皇帝は虚偽を立証できる部分と、古い伝聞を混ぜてしまった部分を分けて調べるよう指示した。間違った地図を売ろうとしたことは責められる。けれど道がないと分かった事実まで、商人の言葉への反発で消してはならなかった。


翌日、斥候が峠へ向かった。古い石橋はあったが、渡った先の道が崩れていた。商人の地図に書かれた宿場も空き家になっている。ただし谷の向こうには煙が上がり、冬を越す炭焼きの集落が残っていた。


皇帝はその道を今すぐ進軍路に使う案を取り下げ、峠の測量を続けさせた。山に暮らす者を尋問するなとも命じた。敵領へ入る道と、そこで暮らす者の道は同じ紙に描けても、同じ目的で存在しているわけではない。

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