薬草の相場
ギルドの依頼掲示板に、同じ薬草を集める札が六枚並んだ。依頼主は軍、救護所、村医者、町の商人と異なっている。値段もそれぞれで、軍の札だけが異様に高い。セイルはミレーネに頼まれ、採集地が重ならないか調べることになった。
「高く買うのは悪いことではないでしょう」と若い冒険者が言った。セイルもそう思う。だが軍の依頼を受けた者が山の薬草を採り尽くせば、村医者は次の季節に困る。高価な札に人が集中すれば、安い依頼を受けていた古参の薬草師は仕事を失うかもしれない。
セイルは山へ同行した。剣を持つ者に最適な足運びは分かっても、葉の採り方は薬草師から教わらねばならない。茎を根元から刈ると次の芽が出ない種類がある。岩陰の群落を見た彼は、最短路を選んで踏み潰すより、遠回りして残す方を選んだ。
山を下りるとき、若い冒険者が採り残した花を惜しんで振り向いた。薬草師は、あの一株が残れば来季に根が広がると教えた。セイルも少し前なら目先の依頼を優先したかもしれない。灰環島には一年待たねば得られない食べ物があり、島を離れる日の朝まで採らなかった実があった。彼はその場所を、ふいに思い出した。
戻ってから軍へは、採集量に上限を設けるよう頼んだ。ダリオは負傷者の薬が足りないと難色を示したが、薬草師が別の土地に栽培できる品種を知らせたことで、調達計画を分けられた。今夜の不足と来月の枯渇は別の問題だった。
薬草師は帰り際、値段を下げられると生活が苦しくなると言った。セイルは安く買うとは約束していなかった。軍が必要な量を正しく契約し、村に必要な株を残す。それができるまで、最適解という言葉を軽く口にする気にはなれなかった。




