↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《適正》の軍師――SSS級冒険者は、天才皇帝の侵攻に挑む  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/192

水差しの位置

前線の仮設本営で、セイルは軍議に参加した。机の中央には国境の地図、その周囲には階級順に将校が座る。水差しは窓際に一つだけ置かれていた。議論が長引くたび、末席の伝令が立ち上がり、上席の杯を満たしに行く。そのたび報告が一瞬止まった。


セイルは水差しを二つに増やし、伝令の机の近くにも置いてもらった。些細な変更だったが、連絡が途切れなくなった。将軍ダリオは苦い顔をしたものの、反対はしなかった。


本題は防衛線だった。軍の多くは石造りの古砦へ兵を集中させたがっている。セイルは砦の井戸の深さを尋ねた。答えられる者はおらず、現地の兵に確認させると、水位が昨年より下がっていた。長い籠城には足りない。


「砦を捨てろと言うのか」ダリオが尋ねた。


「今すぐではありません。ですが井戸を増やせないなら、そこへ兵を集めるほど飲み水が減ります」


地形を見たセイルは、砦の後方に点在する農家の雨水槽を思い出した。水はそこへ分散して蓄えられている。兵も分散させ、伝令の道だけを確保する案を示した。防衛線は長くなるが、一か所が破れても全軍が渇くことはない。


軍議のあと、ダリオは無言でセイルを廊下へ呼んだ。「お前は兵の命を背負っていない。だから簡単に言えるのだ」


「そうかもしれません」とセイルは答えた。「だから将軍に決めていただきたい。私は見落としそうな水の話をします」


軍議に参加した測量官は、まだ訂正されていない井戸の印を自分から指摘した。ダリオは珍しく礼を言った。誰かの誤りをあげつらうより、訂正が間に合う場所を増やす方が早かった。


その夜、砦へ送るはずだった水樽の一部が、後方の農家に運ばれた。地図の赤い線は変わらない。それでも防衛の形は少しだけ変わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。