↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《適正》の軍師――SSS級冒険者は、天才皇帝の侵攻に挑む  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
112/216

渡らなかった夜

クラウスが冬の限定攻勢を再び求めた。帝国軍は橋頭堡を維持し、王国の丘に大きな動きがない。準備した兵力を使わずにいれば、士気が下がるという。レオンハルトは夜の気温と川の水位を確認した。工兵からは、氷が夜半に鳴り続けているとの報告が来ていた。


「音がするだけでは危険とは限りません」と将軍は言った。「危険かどうか分からぬまま兵を渡す理由にもならぬ」皇帝は答えた。攻めるための条件が揃わないなら、攻めない。自分で定めた基準を、苛立ちで変えてはならない。


その夜、帝国兵は橋の手前で待機した。槍を持ったまま夜を越す者も、仮眠の許された者もいた。夜半、川の上流で大きな音が響いた。氷の塊が流れ下り、橋板の一部を叩き割った。攻勢を命じていれば、川の上にいた兵が巻き込まれただろう。


クラウスは皇帝へ結果を報告し、命令に従ったことへの安堵を見せた。レオンハルトは勝ち誇らなかった。自分の慎重さが偶然救いになっただけかもしれない。危険な夜を避けても、別の日の危険までは消えない。


橋が壊れた知らせを受けた兵の一部は、夜を越えられたことを喜んだ。一方で家族への手紙をいつ出せるか心配する者もいた。レオンハルトは後方へ小舟を回し、郵便だけは川の別の場所から運ぶよう手配した。軍の進行を止めても、家族へ向かう言葉まで止める必要はなかった。


翌朝、工兵は壊れた橋を修理し始めた。皇帝は作業の中止を命じず、余った兵を橋材の輸送へ回した。戦争は進まなくても、人が働く時間だけが過ぎていく。渡らなかった夜の意味は、命が失われなかったことだけにあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。