王命とギルド札
王宮からセイルへ、新たな命令書が届いた。期限付き参与としての任務を延長し、軍の正式な軍師に任じたいという。書面には国王アルベルトの印があり、報酬と護衛も記されている。セイルはすぐには署名せず、まず依頼を出したギルドへ手紙を書いた。
ミレーネから返事が届いた。「王国があなたを欲しがるのは当然です。でも冒険者としての契約を一方的に破るなら、こちらも断る権利があります」彼女は政治的な判断を迫らず、本人に決めるよう促した。
ダリオは正式な軍師になれば発言力が増すと説明した。セイルは確かに軍議で苦労していた。だが指揮権を持てば、他人に危険な行動を命じる立場になる。自分が選ぶ最適な一歩と、数千人が同時に踏み出す一歩は同じではない。
彼は国王へ書面を返し、臨時参与のまま任期満了まで務める意向を伝えた。必要なら更新は協議する。ただし正式な軍師という身分だけを先に受け取ることはできない。王宮の使者は不満げだったが、回答を持ち帰った。
セイルは任命書の報酬欄をもう一度読み返した。金額は冒険者として稼ぐより多い。だがその金で、自分の判断を正しいことにできるわけではない。王宮の使者には、現地の将校が異論を言える仕組みを残してほしいと伝えた。指揮権がない自分だからこそ、反対される余地を大切にしたかった。
その夜、セイルは自分の銀黒色の冒険者札を布で磨いた。二十五歳までに積み上げた仕事の記録が、その小さな札に残っている。王国の軍事に関わり始めても、帰ってこられなかった人の捜索や魔物の駆除を、突然他人事にはできなかった。




