石の下の声
王国軍の工事現場で、土砂が崩れて二人の兵が生き埋めになった。セイルは近くの作業隊から呼ばれ、崩れた斜面へ走った。土の中からかすかな声が聞こえる。彼は一度足を踏み出し、すぐに止めた。上の岩がまだ動いている。近道を選べば、助ける側まで埋まってしまう。
工兵長は支柱を組むための材木が足りないと言った。セイルは現場の資材置き場を見て、短い板を組み合わせて支柱にする方法を示した。接合部へ圧力が集中するため、強度の計算は工兵に任せる。彼は人の動きが重ならない位置を選び、掘る順番を整理した。
一人目は自力で這い出した。二人目は脚が挟まり、意識が薄れていた。セイルが剣を差し込んで石を動かそうとすると、工兵長が止めた。「剣が折れれば余計に傷つく」彼はその指摘を受け、持っていた剣を鞘へ戻した。自分の判断がいつも最善とは限らない。
ようやく二人目を救出すると、兵は小さく「外の音が聞こえていた」と呟いた。土を掘る槌の音、仲間が名前を呼ぶ声。それが消えなかったから、息を続けられたという。
助かった工兵は、支柱を組んだ若い仲間の名前を聞きたがった。セイルは全員の名を知らず、工兵長に尋ねて一人ずつ確かめた。現場では誰もが忙しく、助けられた者に名乗る時間がなかった。後日、救助に関わった者が救護所で再会した。礼を言う声より、互いの無事を確かめる声の方が長く続いた。
夜、崩れた斜面には新しい支柱が立った。セイルは工兵長へ事故の原因を調べるよう頼み、負傷者を見舞った。救出の成功だけを残しては、同じ土の下でまた声を聞くことになる。




