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《適正》の軍師――SSS級冒険者は、天才皇帝の侵攻に挑む  作者: 竜太郎


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名誉より先の薬

帝国前線の将校が勲章の授与式を希望した。高台を得た戦果を記念し、兵を集めて旗を掲げたいという。レオンハルトは式そのものに反対しなかったが、当日の予定表に軍医が不足する時間帯を見つけた。式へ参加する衛生兵が多すぎたのだ。


「英雄を称えることも必要です」とクラウスが進言した。「英雄が明日も歩けることの方が先だ」と皇帝は答えた。式は短くし、負傷者の治療を担う者は参加を免除する。勲章は後で本人へ届ければよい。


将校は不満を漏らしたが、式の直前に一隊の負傷兵が運ばれてきた。岩場で馬車が転覆し、戦闘とは関係のない事故だった。衛生兵たちが残っていたため、手当てはすぐ始まった。皇帝は運のよさに満足せず、軍用車の点検記録を確認させた。


授与式では、勲章を受ける兵の中に片腕を失った者がいた。彼は勲章より退役後の仕事を心配していた。皇帝は式後、退役兵の職業訓練制度を調べさせた。戦場で勇敢だった人間が、町で働けなくなることを当然にはしたくない。


勲章を受けた片腕の兵は、帰郷後に鍛冶屋へ戻れるか尋ねた。皇帝は簡単に「戻れる」とは言えなかった。火箸を持つ腕も、金槌を振る腕も必要な仕事だ。だが工房には火を管理する者、材料を測る者もいる。職業訓練官へ本人の技能を調べるよう命じ、無理な慰めではなく実際の選択肢を探させた。 退役兵は、返事を急がず工房の話をした。


夜、レオンハルトは式で掲げられた旗を見た。布は立派で、刺繍も美しい。しかし旗を支える竿を運んだ兵も、その日帰りの馬車を修理した工兵も、式では名を呼ばれなかった。名誉の形を変える仕事が、まだ残っていた。

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