人の集まらない広場
帝都では徴兵を知らせる掲示板の前に、誰も立たなくなっていた。以前は志願者が名を連ね、家族が送り出しに来た広場である。レオンハルトは政務官からその報告を受け、士気が落ちたのかと尋ねた。答えは違った。新しい徴兵の規則が複雑で、誰に資格があるのか分からなくなっていた。
徴兵官は書類を増やし、不正な免除を防ごうとしていた。だが農民は土地の証明を持たず、職人は親方の署名を得るために仕事を休まねばならない。志願する前に書類へ疲れてしまう。皇帝は規則を減らし、必要な確認を役所側で行うよう指示した。
リディアは人手不足を訴えた。確認する役人も戦時で少ない。レオンハルトは役所の配置を改め、重複した審査を一つにまとめた。規則の数を増やせば公平になるとは限らない。
数日後、広場へ若者が戻ってきた。しかし皇帝は集まった人数をそのまま成功と数えなかった。家を守る者、畑を耕す者、兵になる者。どれも国に必要だ。志願者の多さだけを喜べば、残る仕事が空になる。
広場の受付にいた老人は、文字を読めない志願者のために書類を代筆していた。規則が簡単になっても、その仕事は残った。レオンハルトは代筆者への謝礼を定めさせ、偽の署名を防ぐため本人の確認方法も整えた。手続きが短くなれば、誰もがすぐ理解できるわけではない。 広場の掲示板には、読み上げの時刻も加えられた。
その日の夕方、広場を歩いたレオンハルトは、掲示板に貼られた小さな紙を見つけた。徴兵に行く兄の代わりに、薪割りを手伝ってほしいという少女の頼みだった。国家の命令が、一つの家の冬仕事を変えていた。




