十歳の教本
国境近くの避難学校で、子供たちがスキルの授与儀式について学んでいた。セイルは物資の搬入に同行し、教室の外で先生の声を聞いた。十歳で授かるスキルは、その人が得意な仕事を示す。火魔法、剣術、格闘、治癒。黒板には分かりやすい絵が並ぶ。
一人の少女が「どれにも当てはまらない人はいるの」と尋ねた。先生は少し迷い、「珍しい名前のスキルもあります」と答えた。セイルは教室へ入るつもりはなかったが、子供たちが銀黒色の札に気づき、質問を浴びせてきた。
「あなたのスキルは何ですか」「適正、です」子供たちは首を傾げた。少女は「何に適しているの」と尋ねた。セイルは困った。自分も長い間、答えを探してきた。「歩くときは歩くのに。剣を持つときは剣を扱うのに、少し役に立ちます」と説明した。
子供の一人が「じゃあ何でもできるんだ」と笑った。セイルは机の壊れた引き出しを見つめた。「壊れた物を直せるなら、材料が要ります。風を止めることもできません」少女はそれを聞き、少し考えた。
黒板の絵を描いた教師は、剣術が授与されれば剣士になると教えていた。セイルはその説明を否定するより、畑仕事を選ぶ剣術持ちもいるかもしれないと話した。子供たちは笑ったが、一人の少年だけは祖父が槍術持ちのパン屋だと教えた。先生はその話を黒板の端へ小さく書き足した。
授業の終わりに先生が教本を閉じた。セイルは帰り際、十歳の子供が一度の儀式で人生を決められるような説明になっていないかと尋ねた。先生は小さく頷いた。儀式で得るものと、生きて覚えるものは別だと、明日から伝えることになった。




