宣戦の代償表
レオンハルトは開戦以来の費用を一枚の大きな表にまとめさせた。兵糧、輸送、医療、橋、遺族への扶助。項目の横には予定額と実際の支出が並ぶ。多くの欄が赤字だった。皇帝は損失を責めるためでなく、最初の判断がどれほど現実と違っていたかを知るために作らせた。
リディアは赤字の大きな項目を示し、「来春の農業支援を削れば均衡できます」と言った。レオンハルトは即答しなかった。農業を削れば翌年の穀物が減り、兵を食わせる費用が再び増える。帳簿の一行を消しても、国家の支出が消えるわけではない。
彼は軍に使う予定だった儀仗品の予算を削り、宮殿の修繕を延期した。それでも不足の一部しか埋まらない。クラウスは戦果を増やせば補えると主張した。皇帝は「土地が増えても、すぐに税が入るとは限らぬ」と答えた。占領地に住む人々は敵国の臣民だったばかりで、生活の立て直しに金が要る。
夜遅く、皇帝は表の一番下へ、まだ数字にできない損失を書き加えた。父親のいない家。職人が戻らない工房。冬を越せなかった家畜。金額では表せなくても、国家の仕事を減らす原因になる。
表の一角には空欄のままの地代補償があった。占領地の耕作地を軍が使っているが、所有者が避難して所在を確認できないためだ。皇帝は空欄を零と扱わず、未確定の支出として残すよう命じた。請求する人がいないからといって、借りた土地が誰のものでもなくなるわけではない。
翌朝、リディアへ表を返すとき、レオンハルトは「これを毎月作る」と告げた。勝利の報告が届かない月でも、国は費用を払い続ける。見たくない数字から目を離さないことが、開戦した者の義務だった。




