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世界が揺れた瞬間を、俺は覚えていない。
気がついたら、そこは洞窟の地べたで、俺の視界は極端に低かった。身体は……ない。いや、ある。透明で、ぷるぷると震える、直径三十センチほどの球体として。
スライムだ。俺は、スライムになった。
前世の記憶がある。地球という星で、ゲームをやり込んでいた人間だった記憶が。そして転生した直後に、宙から降ってきた声が言った。
「汝、魔王候補として生を受けたり。エクシリアに吹く魔の風と共に在れ」
STATUS WINDOW / 個体情報
ヴォルク(命名前)
種族 原初スライム
称号 魔王候補
魔力 1 / 1
体力 3 / 3
固有スキル 『魔王の眼(封印中)』
魔王候補順位
-- / 247位(測定不能)
……測定不能ってなんだ。
そもそも魔力が一しかない。体力は三。俺は今まで転生物のゲームを数百時間プレイしてきたが、これほど悲惨なスタートは見たことがなかった。序盤のボス敵に轢かれるどころか、道端の雑草に宿った虫に踏まれただけで死ぬレベルだ。
しかしそれよりも気になるのが、「魔王の眼(封印中)」というスキルだ。
魔王候補として生まれた、というのは本当らしい。だがこの身体では、他の候補者に見つかった瞬間に終わる。まず生き延びること、それが最優先だ。
俺はずるずると身体を動かして、洞窟の奥へと逃げた。最弱の魔物が、世界最強の座を目指す旅が――こうして、地べたを這うところから始まった。




