表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された公爵令嬢は、無能扱いの第二王子の政務を支えることになりました ~捨てた第一王子が後悔しても、もう遅いです~  作者: 藤宮レイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
98/108

第98話 三年目の約束

 緩衝措置。


 三年前、倒産の波の中で作った制度だ。


 救済ではない。


 移行の時間を買う制度。


 そして――三年で終わる、約束の制度。


 期限の議題は、荒れた。


「延長を求める陳情が、三十七件」


 担当官が読み上げる。


「地方議会からの要望書が、九件」


 当然だ。


 ルーデンの圧力で、物価は上がっている。


 この時期に支えを外すのか、と誰もが言う。


 言いたくなる気持ちは、分かる。


「不要です」


 その声は、迷いなく議場を横切った。


 経済監査官、イザベラ・クラウディア。


「三年で終了する。それが導入の条件でした」


「私が付けた、条件です」


「約束は、約束です」


 正しい。


 この人は、いつも正しい。


 だが、正しさだけでは国が回らないことを――


 私に教えたのも、この三年だった。


「エリシア様は、いかがお考えですか」


 視線が集まる。


 延長か。


 終了か。


 どちらを選んでも、誰かが傷つく議題。


 私は、立ち上がった。


「緩衝措置は、予定どおり終了します」


 ざわめき。


 落胆の色。


 イザベラだけが、表情を変えない。


「ただし」


 私は続けた。


「終わらせ方を、設計します」


「……終わらせ方?」


「この三年間、措置を受けながら帳簿を正しく付け、返すものを返してきた商会が、数多くあります」


「その三年の帳簿を、国が証明します」


 議場が、静まった。


「信用記録として、です」


「国が確認した三年分の記録。それを、金融の場で担保として使えるようにします」


 イザベラが、目を上げた。


「……融資の担保に、記録を使わせると」


「はい」


「金は、もう出しません」


 私は言い切った。


「ですが、信用は出します」


「三年間、約束を守り続けた者には、それを証明する紙を」


 沈黙。


 議場の空気が、ゆっくりと変わっていく。


 施しではない。


 延長でもない。


 三年を、無駄にしない終わり方。


 やがて、イザベラが口を開いた。


「賛成です」


 短く。


 いつも通りに、短く。


「約束は守られ、数字も守られる」


 そして、彼女には珍しく一言足した。


「三年前のあなたなら、金を出すと言ったでしょうね」


「……そうですね」


「成長です」


 褒め言葉だと気づくのに、少しかかった。


 緩衝措置の終了と、信用記録の発行は、その週に公示された。


 陳情の声は、消えなかった。


 だが、怒号にはならなかった。


 三年の帳簿が紙になって返ってくる。


 その意味を、商人たちは誰よりも早く理解した。


 そして。


 後日談のように、一つの報告が届いた。


「終了公示が、東方の商圏で話題になっています」


 カイルの報告だった。


「期限を守る国」


「約束を、記録どおりに終える国」


 東方の商人たちは、我が国をそう呼び始めているという。


 口説き文句のない、一通の書状と。


 期限を守った、一枚の公示と。


 その二枚の紙が、思わぬ扉を開けることになる。


 扉は、三日後に叩かれた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!

次話、東方の使節が卓に着きます。第1章のクライマックスです。

ブックマークや評価で応援いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ