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婚約破棄された公爵令嬢は、無能扱いの第二王子の政務を支えることになりました ~捨てた第一王子が後悔しても、もう遅いです~  作者: 藤宮レイ


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第71話 見えた敵

 王宮の空気は、明らかに変わっていた。


 静かだ。


 だがそれは平穏ではない。


 張り詰めた静寂。


 何かが潜んでいる。


 私は執務室で報告書を見ていた。


 暗殺未遂。


 捕縛者三名。


 だが、核心には届いていない。


「口は割りましたか」


 カイルが答える。


「いいえ」


「末端です」


 やはり。


 予想通りだった。


 これは計画的な動き。


 末端に全てを持たせるはずがない。


「資金の流れは」


「追っています」


 紙が差し出される。


 私は目を通す。


 いくつかの商会。


 複数の貴族名義。


 そして――


「……重なっていますね」


 カイルが頷く。


「はい」


「同じ資金経路に複数の関係者」


 つまり。


 単独ではない。


 組織。


 それも――


「王宮内部ですね」


 私は言った。


 カイルは黙って肯定した。


 その時、扉が開く。


 ルシアン殿下が入ってくる。


「進んでいるか」


「はい」


 私は資料を差し出す。


「暗殺未遂の背後ですが」


「複数の貴族と官僚が関与しています」


 殿下の目が細くなる。


「名は」


「まだ確定ではありません」


「ですが」


 私は続ける。


「共通点があります」


 資料の一部を指す。


「改革によって権限を失った者たちです」


 沈黙。


 それは当然の帰結だった。


 制度改革。


 透明化。


 それは既得権を壊す。


 壊された側は、抵抗する。


 殿下が言う。


「つまり反改革派か」


「はい」


「ですが」


 私は首を振る。


「それだけではありません」


 視線を上げる。


「彼らは連携しています」


「貴族、官僚、そして商人」


 それは危険だった。


 単体ではなく、


 横に繋がっている。


 それは――


「権力の再構築です」


 私は言った。


 制度ではなく。


 旧来の繋がりで動く国家。


 殿下が低く言う。


「放置すればどうなる」


「国家が二つに割れます」


 短く、明確に。


 王宮の権力と、


 非公式の権力。


 それが並立する。


 最悪の状態。


 その時。


 再び扉がノックされる。


「ドミニク侯爵です」


 室内の空気が変わる。


「入れろ」


 殿下が言う。


 侯爵が入ってくる。


 静かに一礼。


 そしてすぐに言った。


「状況は理解しています」


 無駄がない。


 私は一歩前に出る。


「どこまで把握していますか」


 侯爵はわずかに笑う。


「あなた方と同じです」


 そして続ける。


「あるいは、それ以上に」


 沈黙。


 彼は知っている。


 それもかなり深く。


「では」


 私は問う。


「誰ですか」


 侯爵は一瞬だけ視線を逸らし、


 すぐに戻した。


「まだ名は言えません」


「ですが」


 静かに言う。


「中心は一人です」


 空気が張り詰める。


「誰ですか」


 殿下が低く問う。


 侯爵は答えた。


「元・財務院上級官」


「そして現・貴族顧問」


 私は一瞬、思考が止まる。


 その肩書き。


 あり得る。


 制度改革で最も影響を受ける場所。


 財務。


「……資金の流れと一致します」


 カイルが言う。


 侯爵は頷いた。


「彼は制度を理解している」


「だからこそ」


 目を細める。


「壊し方も知っている」


 沈黙。


 重い現実。


 敵はただの反対者ではない。


 理解者だ。


「……どうしますか」


 カイルが問う。


 私はゆっくり息を吐いた。


 そして答える。


「表に出します」


 殿下がこちらを見る。


「証拠を揃え」


「公開の場で」


「逃げ場をなくす」


 それが最も強い。


 侯爵がわずかに笑う。


「正しい」


「ですが」


 続ける。


「時間はありません」


 私は頷く。


 分かっている。


 敵も動く。


 こちらが動く前に。


 殿下が立ち上がる。


「なら急げ」


「はい」


 私は一礼する。


 戦いは次の段階へ入った。


 見えなかった敵が、見えた。


 だがそれは終わりではない。


 始まりだ。


 私は歩き出す。


 この戦いは、


 国家そのものを決める戦いになる。


 そう確信していた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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