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婚約破棄された公爵令嬢は、無能扱いの第二王子の政務を支えることになりました ~捨てた第一王子が後悔しても、もう遅いです~  作者: 藤宮レイ


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第64話 政治の代償

 三日という時間は、あまりにも短かった。


 だが、止まることはできない。


 ルグナの仮設執務室。


 机の上には地図と数字が散乱している。


「流通保証の準備は」


 私は問いかける。


 宰務官代理が答える。


「王都から資金は出ます」


「ですが輸送が追いつきません」


 やはりそこだ。


 物が届かなければ、金だけでは意味がない。


「北方ルートの優先順位を変更します」


 私は即断する。


「ルグナを最優先に」


「しかし他都市が――」


「後回しです」


 言い切る。


 誰かを救えば、誰かが遅れる。


 それが現実だった。


 沈黙が落ちる。


 だが誰も反論しない。


 時間がないことを理解しているからだ。


「価格基準の設定は」


「暫定値を出しました」


 紙が差し出される。


 私は目を通す。


 高すぎる。


 だが低すぎても崩れる。


 均衡点。


 その一点を探す。


「……これで行きます」


 完全ではない。


 だが、今は動かすことが優先だ。


「発表は本日中に」


「了解」


 命令が飛び、部屋が動き出す。


 私は一瞬だけ目を閉じた。


 これでうまくいく保証はない。


 むしろ――


 失敗する可能性の方が高い。


 だが、それでもやる。


 その時、カイルが小さく言った。


「殿下から伝言です」


 私は顔を上げる。


「何と」


「『背負え』と」


 短い言葉。


 だが、十分だった。


 私は小さく頷く。


「はい」


 それだけでいい。


 夕方。


 市場に新しい張り紙が出される。


 価格基準。


 流通保証。


 王宮の署名。


 人々が集まる。


「……本当にやるのか」


「値段が決まってる」


「買えるのか?」


 疑いと期待が混ざる。


 最初の取引が行われる。


 小さな袋の穀物。


 金貨が一枚。


 成立。


 たったそれだけ。


 だが。


「……動いた」


 誰かが呟く。


 止まっていた市場が、わずかに動く。


 それは小さな変化。


 だが確かな一歩。


 その夜。


 私は一人で帳簿を見ていた。


 数字はまだ厳しい。


 損失も大きい。


 そして――


「他都市の数値が下がっています」


 報告が届く。


 私は静かに目を閉じた。


 当然だった。


 ルグナに資源を集中させた。


 その分、他が削られる。


 それが政治だ。


 全てを救うことはできない。


 選ばなければならない。


 私は小さく呟く。


「……これが」


 制度ではない。


 理想でもない。


「政治」


 誰かを守るために、


 誰かを後回しにする。


 その重さ。


 その責任。


 それを受け入れるしかない。


 夜の窓の外。


 ルグナの灯りが少しだけ増えている。


 だが同時に、


 別の場所で灯りが消えている。


 その事実を、私は知っている。


 それでも。


 前に進むしかない。


 これが――


 国家を動かすということだった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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