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婚約破棄された公爵令嬢は、無能扱いの第二王子の政務を支えることになりました ~捨てた第一王子が後悔しても、もう遅いです~  作者: 藤宮レイ


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第63話 民衆の怒り

 ルグナの広場に集まった人々は、まだ理性を保っていた。


 だが、それは時間の問題だった。


「保証すると言ったな」


 一人の男が前に出る。


 労働者だろう。


 粗末な服。


 だが、その目は鋭い。


「いつだ」


 私は答える。


「三日以内に動かします」


 即答だった。


 躊躇は見せない。


 だがその言葉に、ざわめきが走る。


「三日?」


「そんなに待てるか!」


「明日の飯もねぇんだぞ!」


 声が荒くなる。


 空気が変わる。


 カイルが一歩前に出る。


「危険です」


 小声で言う。


 私は首を振った。


「まだ大丈夫です」


 だが――


 次の瞬間。


 石が飛んだ。


 私の足元に転がる。


 静寂。


 そして。


「帰れ!」


「王宮は信用できない!」


「どうせ嘘だ!」


 怒りが爆発する。


 理性が崩れ始める。


 これが――民衆だ。


 正しい。


 だが危うい。


 私は一歩前に出る。


「嘘ではありません」


「黙れ!」


 怒号。


「結果を見せろ!」


 それがすべてだった。


 言葉ではない。


 結果。


 それがなければ、政治は意味を持たない。


 私は静かに言う。


「では約束します」


 場が少し静まる。


「三日以内に」


「最初の結果を出します」


 視線が集まる。


 疑い。


 怒り。


 そして、わずかな期待。


「もしできなければ?」


 誰かが言う。


 私は答えた。


「その時は」


 一瞬だけ間を置く。


「この場で責任を取ります」


 空気が止まる。


 その言葉は重かった。


 政治家が、自らの責任を明言する。


 それは覚悟の表明。


 同時に、逃げ場を断つ行為。


「……本気か」


 低い声。


 私は頷く。


「はい」


 沈黙。


 長い沈黙。


 やがて、最初に声を上げた男が言う。


「……三日だな」


「三日です」


「いいだろう」


 彼は振り返る。


「三日待つ」


「それで変わらなきゃ……」


 言葉は最後まで続かなかった。


 だが意味は十分だった。


 暴動になる。


 その合意が、暗黙に成立した。


 人々はゆっくりと散っていく。


 だが完全に収まったわけではない。


 ただ、猶予が与えられただけ。


 三日。


 それが期限。


 その場を離れた後、カイルが言う。


「無茶です」


「分かっています」


「三日で都市を立て直すなど」


「不可能に近い」


 私は小さく息を吐いた。


「不可能です」


 カイルが驚いた顔をする。


「ではなぜ」


「だからです」


 私は言う。


「不可能だからこそ、やる意味がある」


 政治とは、現実を変えること。


 理想ではない。


 結果だ。


 その夜。


 簡易の執務室。


 私は資料を広げる。


 流通。


 資金。


 価格。


 すべてを同時に動かす必要がある。


 時間は三日。


 失敗すれば――


 暴動。


 国家不安。


 改革の崩壊。


「……やるしかありませんね」


 私はペンを取る。


 これは制度の戦いではない。


 政治の戦いだ。


 そして初めての――


 本当の意味での試練だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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