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婚約破棄された公爵令嬢は、無能扱いの第二王子の政務を支えることになりました ~捨てた第一王子が後悔しても、もう遅いです~  作者: 藤宮レイ


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第40話 疑問という名の攻撃

 それは、批判ではなかった。


 ただの「質問」という形式だった。


 王宮広間で開かれた公開協議会。


 保守派貴族連盟の代表として、ドミニク・ヴァルトハイム侯爵が静かに立ち上がる。


「陛下」


 深い一礼。


「我々は改革そのものを否定しているのではありません」


 声は穏やかで、よく通る。


「ただ、いくつかの疑問がございます」


 場の空気が、わずかに張り詰める。


「今回の緩衝措置」


「財源はどこから補填されるのでしょうか」


 当然の問いだ。


 私は即座に答える。


「軍事予算の一部再配分と、中央予備費からの拠出です」


 侯爵は頷く。


「なるほど」


「では、軍備への影響は?」


「近隣諸国の情勢が安定している今、即時の問題はありません」


 私は、資料を提示する。


 侯爵は、微笑を崩さない。


「“今は”」


 その一言が、残る。


「では、もう一つ」


 視線が、私へ向けられる。


「制度改革責任者として、あなたは最終判断を担っている」


「それは事実ですね」


「はい」


「では」


 わずかに間を置く。


「あなたの立場は、どこに位置づけられるのでしょう」


 場が静まり返る。


 それは、政策への質問ではない。


 私自身への問いだ。


「正式な王妃ではなく」


「宰相でもなく」


「血統でもない」


 侯爵は、あくまで穏やかに言う。


「国を動かす立場としての正統性は、どこにございますか」


 それは、攻撃だった。


 だが、声は柔らかい。


 殿下が一歩前に出ようとする。


 私は、わずかに手で制した。


「正統性は」


 私は、静かに答える。


「役職にあります」


「制度改革責任者として、王命に基づいて動いています」


 侯爵は、首を傾げる。


「では、その役職はいつまで続くのでしょう」


「王位が正式に確定し、体制が整った後も?」


 観衆の中で、小さなざわめきが広がる。


 “女が権力を持ち続けるのか”


 言葉にはならないが、空気が揺れる。


 私は、はっきりと言った。


「役割が終われば、退きます」


「私が必要とされなくなれば」


 侯爵の目が、わずかに光る。


「ほう」


「では、あなたは“権力”を求めていない?」


「求めていません」


 即答だった。


「壊れない仕組みを作ることが、私の役目です」


 沈黙。


 侯爵は、ゆっくりと頷いた。


「なるほど」


「その言葉、記録に残していただきたい」


 それが、狙いだった。


 約束を縛る。


 未来の退路を封じる。


 だが、私は動じない。


「構いません」


 堂々と答える。


 協議会が終わった後、廊下に出る。


「……やられたな」


 殿下が、低く言う。


「はい」


 私は、息を吐く。


「正統性の問題を、正式に持ち出されました」


 これは、制度の問題ではない。


 “存在”の問題だ。


 改革は、数字で戦える。


 だが、正統性は――


 思想と信頼でしか、守れない。


 ドミニク侯爵は、まだ攻めていない。


 ただ、疑問を置いただけだ。


 だがその疑問は、

 静かに、確実に、広がり始めていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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