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[十四]

真っ暗な瞼の裏・・・

やっぱり・・・

なにも・・・

もう・・

見えない・・・


でも・・・


お願い・・・


もう一度だけ・・・

夢を見せて・・・


わたしは

ちょんと陸に・・・


さよならが言えてない・・・


お願い・・・


もう一度だけ・・・


夢を・・・見せて・・・・


目を開けると

真っ暗な夜空・・・・

桜の黒い陰が

静かに

ゆれている・・・


風が冷たい・・・痛い・・・・



お願い・・・・



ぎゅっと・・・目を・・閉じる・・・・



真っ暗な・・・・



真っ暗な・・



真っ暗な中に・・・



小さな・・・



小さな・・・・・・!!



白い光・・・・!!!!!!!


白い光が・・・広がってゆく・・・!


夢が・・・陸の夢が!始まる!!!!!


私の瞼の力が・・・少しずつ・・緩むと・・


・・・・あれは・・・・・・


『なぁ。菜生、これあげる!』

小学校の運動会・・帰り道・・・

ニコニコしながら陸がポケットから出したのは・・・


ピッカピカの金メダル。。。


そっと私の首に下げてくれて・・・私は・・

『これは陸が頑張ったからもらったものでしょ?もらえないよ!』

私は首から外そうとすると・・・

『いいんだよ!僕はもう一つとったから!それはあげる!』

陸がニコニコしながら・・

『だって!菜生!欲しがってただろ?僕!絶対金メダルあげたくて

頑張ったんだから!受け取ってよ!』

そういってくれて・・・私はそのメダルもらったんだ・・・

たぶん・・まだ・・家にあるな・・・・




『おーい!写真撮ってくれよ!!!』

修学旅行・・・そうだ・・・京都行ったんだ・・・

『なんで鹿と写真撮ってるの?』

私が笑うと・・

『いいだろ!なんかこいつだけおもしろい顔してるから記念に!』

『はいはい☆』

この時こっそり私・・・自分のカメラでも

陸の写真・・・撮ったんだよな・・・

『菜生も一緒にとろう!』

カメラ・・観光客の人に渡して・・・

鹿と陸と私で3ショットで撮ったっけ・・・

あのときの写真・・・

あ!確か・・・手ブレがひどいとかで・・結局

もらえなかったんだよね。。。。。




『菜生!これもってきたぞ!』

私が・・・麻疹になったときだ。。

中学にもなって麻疹?って笑ってたけど・・・

毎日ノートとってくれて・・・・

『僕はとっくに麻疹は済んでるから大丈夫!』

そういって・・・

『菜生のおもしろい顔見れるのはめったにないから!よくみとかないとな!』

ニコニコしてて・・・

『見にこないでよ!』

って私が笑いながら言ったっけ・・・

そう言いながら・・・嬉しかったな・・・・



次々に。。。私と・・・陸との

思い出が降ってくる・・・



『菜生!』

優しい笑顔の陸・・・


『どうした?』

困った顔の陸・・・・


『良かったな!!!』

笑顔の・・・陸。。。。


でもね・・・・

もう・・・

陸は。。。


この人は。。。。


どこにもいないんだよ・・・・・!



『菜生!これ・・・なんか分量間違えなかったか?』

調理実習で作ったゼリー・・失敗しちゃって・・

『ごめん!食べなくていいよ!』

そういったら・・・


『嘘!うめぇ〜!これ!ありがとうな!』

そう言って美味しそうに食べてくれて・・・

にこっと笑って・・・


なんでそんなに優しい夢ばかり・・・


優しすぎる夢ばかり・・・私に見せるの・・?


やだよ・・・この夢・・・


陸が・・・


陸が・・・





  さよなら言ってるみたいじゃない・・・・!






私見たくないよ・・・

もう・・・

見たくないよ・・・・!



こんなのやだ・・・



こんなの・・・



次々に・・・


陸の笑顔が・・・


私の笑顔が・・・


溢れてくる・・・・


やめて・・・


止めて・・・・!


もう見たくない・・・


もう見たくない・・・・・・!


もう見たくない!!!!!!!!




『今年の夏はどこ行こうか?』

学校の帰り道・・・・

『またあそこの海いくか?』

夕暮れの・・・・

『んー・・・それって毎年同じじゃない???』

私そう言いながら・・・すっごく嬉しかった・・・

また一緒に・・・

ずっと一緒にいられることが

嬉しかった・・・!


どこでもよかった・・

ただ一緒にいられれば・・・


『菜生は嫌か・・・?』

『そんなことないけど・・・』

『あの海好きなんだよ!いい思い出があそこにはいっぱいあるから!』





     


     『またいいことがいっぱいありそうで・・好きなんだよな・・・!』





なんでそんな風に微笑むの・・・!


やめて・・・・!


溢れ出て・・・思い出が溢れ出て・・・


消えていきそうで怖いの・・・・・!


思い出が

抜け落ちていきそうで怖いの・・・・・!


夢を止めて!!!!


お願い!!!!


こんな風に・・・もう見せないで・・・・!!!!





・・・・・・・・もう・・・・見せないで・・・・・・・!!!!






『菜生とはなんか・・・ずっと、このまま一緒の気がするな・・』

満開の桜の木の下・・・・

『保育園に、小学校、中学校に・・・高校の・・クラスまで一緒だもんなぁ』

陸がそういうから

『・・・腐れ縁なんていいたいの????』

わたしはわざとニヤニヤしながら言うと・・・・・

『いや・・・そうじゃなくて・・・』



『菜生は、ぼぉーとしてて危なっかしいから、きっと神様が・・』







   『一生、ずっと、守ってやれ!って言ってるのかもな!』






・・いや・・・・・・・・・


・・・・・お願い・・・・・・・・!


・・・・・止めて!止めて!止めて!!!!!!






      


・・・・・もう!・・・なにも・・・見たくない!!!!!・・・・・








その時・・・・声がした・・・・・


懐かしい声・・・・・


『・・・菜生・・・・』


私を呼ぶ声・・・





   ・・・・・陸の・・・・声・・・・




『・・・目をそらさないで・・・ちゃんと見て・・・』


やっぱり・・・陸の声・・!


『どこにいるの?』



私はあたりを夢中で・・・見渡すと・・・


『・・・ずっと一緒にいるよ・・・・』


やっぱり・・・


陸は・・・ずっと・・・一緒に・・・・



ずっと一緒にいてくれたんだ!!!!!!


でも・・・・


もう・・・

こんな風に

陸と・・・

笑いあうことはできないんだよ・・・・


見たくない・・・!


見たら・・・・


陸がどっかに行っちゃう・・・!


『バレンタインデーのチョコ食べるか?』

学校からの帰り道・・・私におもむろに紙袋渡して・・

『チョコあんま好きじゃないからあげるよ』

そう言ったから・・・

チョコ渡せなかった・・・・


『菜生は誰かにチョコあげたの?』

そう聞いてきて・・

『あげてないけど?』

『僕には?』

『チョコ嫌いでしょ?』

『・・・もってるのか?』

頷いてバックから出すと・・・・・

『このチョコうまそうだから!交換な!』

そう言って嬉しそうに

私のチョコ食べてて・・・


なんで!

見たくないのに!!


止まらないの!



陸の声がした・・・


『ちゃんと見て・・・菜生・・・・』



穏やかな声・・


『・・・ちゃんと見て・・・』





『・・・・菜生・・・・このすべてがね・・・僕と君の・・・』







      





      『・・・・・・・・約束だから・・・・・・・・・』








約束・・・?


陸が優しく語り続ける・・・・



『・・・この丘で見てたもの・・・あれはね・・・・夢なんかじゃないんだよ・・・』




『・・・すべて現実・・・』




『・・・・君と僕が交わした・・・約束なんだよ・・・・・』



『・だから・・よく見て・・』



私の目に・・・

優しい笑顔の陸が映る・・・



『・・なんで人が・・生まれてくるか・・・菜生はわかる・・・?』




陸が・・・・笑ってる・・・・・





『・・生きることは・・・それ自体が・・・・約束なんだ・・・』





陸が・・・微笑んでる・・・





『素敵な日々を過ごして・・・僕たちは・・・素敵な約束をたくさんして・・また出会うことを誓って・・別れていく・・』




笑いあってる・・・




『菜生はみただろ・・・?僕たちは・・・あんなにもたくさんの約束をして・・・別れた・・』




笑い声が・・・




『・・・再会といういう・・・約束を・・・果たすために・・・別れたんだよ・・・』







     


           ・・・・・・・響く・・・・・・・





『大丈夫・・・僕たちは・・あんなにもたくさん・・・素敵な日々を送って・・・たくさんの約束を果たしてきたんだから・・・また逢えるよ・・・』






『・・・だから・・・菜生・・・・・・・』







『・・君はしっかりと生きて・・・たくさんの素敵な約束をして・・・また僕と逢おうね・・・』







優しい懐かしい声。。。




『・・・生きていることは・・・約束すること・・・そして・・約束を果たすこと・・・』







『君との約束を果たすために・・・生まれてきた人達が・・・たくさんいるはずだから・・』




大好きだった。。。。




大好きだった。。。。。。。。。!




大好きだった!!!!!!!!!!!!


   










            『・・・・思う存分・・・・生きて欲しい・・・』














   陸の笑顔が・・・・大好きな・・・笑顔が・・・見えた気がした・・・









今・・・きっと・・・微笑んでる・・・






私が・・・大好きな・・・・






あの・・・







微笑まずに、いられない






笑顔で・・・





『うん!』


私はその笑顔に応えるように・・・










          ・・・・・・泣きながら・・・・・・・微笑んだ・・・・









白い光がすこしずつ・・・

白い夢がすこしずつ・・・


消えていく・・・・


『・・・僕も・・もう・・そろそろ・・・別の約束を果たしに・・・行かなくちゃいけないんだ・・・』




『・・だから・・・少しの間だけ・・・菜生とはお別れだ・・・・』




『・・・・でも・・・・最後に一つだけ・・・僕の願い・・叶えてもいい・・?』


消え行く夢の中・・・・


『・・僕は・・・菜生に・・・触れたいんだ・・・』


陸の声・・・


『・・・でも・・・僕には・・・触れられる体が・・・もう・・・ない・・・』


『・・・・・だから・・・・・・』


白い夢が消えて・・・

私は静かに目を開けると・・





夜空が広がっていて・・・・




心の中に・・・





陸の声が・・・




『・・今・・・ひとひらの・・雪になって・・舞い落ちるから・・そのまま・・・そのままでいて・・・ほしい・・・』




聞こえた・・・・





真っ暗な空の中を・・・




ゆらゆらと




雪が





舞い落ちる・・・





ひとひらの・・・





・・・白く・・・光る・・・・











  ・・・・・・・・・・・・・・・・・雪・・・・・・・・・・・・・・









『・・・僕は・・雪になって・・・君に触れるから・・・・・・・・・・』








        





        『・・・・・・・・今・・・・触れるから・・・・・・』











静かに




目を




閉じると・・・・





唇に・・・かすかな・・・冷たさを・・・・




感じて・・・・・・・・・・・








   


            ・・・・・・・・消えた・・・・・・・・・












私は・・ゆっくりと・・・指で・・・唇に・・触れると・・・・













        『・・・・・・ありがとう・・・また・・・逢えるよね・・・・・・・』









ふんわりと微笑みを浮かべて・・・・・・

  



瞳からじんわりと・・・涙があふれて・・・




頬を・・・静かに・・・・伝っていった。。。。









そのまま





そのまま





ぼんやり・・・





夜空を・・・・眺めて・・・・





涙が止まるのを・・・・・待っていた・・・・・





・・・・・・・・・・・




・・・・・・・・





・・・・・・





・・・





・・・・・・・・・・・・・・





やっと涙が乾くと・・・・・・・・





わたしは・・・



身体を



ゆっくりと



起こして・・・・・・・・・








『よッ!あいつに逢えたのか?』


海がニカッと笑って

ゆっくりと近づいて来て・・・



『大丈夫か?立てるか?』

手を差伸べてくれた・・・


握ったその手は・・・・・冷たくて・・・


『・・・・いつからいたの・・・?』

私が思わずそういうと・・・




『いつからだろうな・・・わかんねぇ〜』


海はそう応えると・・・


『だって!女の子・・こんなとこに寝かしといたら危ないだろ・・・?』






『でもな!なんか・・あいつと話してるのかな・・・?って思ったら・・・・起こしたくなくてな!ずっと見守ってた!』



私は思わず・・・



               





            『・・・・・ありがとう・・・・・・』






海に・・そういった。。。。



海は・・・・・

『あのな!こういう時はな!ありがとうより・・・』






『愛してる!とか好きです!とか言うもんだぜ・・・?』






海が二カッと笑って・・・・・・・




私は

なんだか・・・また涙が溢れそうになって・・・・


『おばか〜☆』


力いっぱい微笑みながら・・・そういうと・・・・



海は・・・


『ん〜????おばかぁ〜???・・・まぁ!いいか!』







『嫌いじゃなけりゃ!なんでもいいや!』





そう言ってニカッと笑った。






(完)


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