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決着

 レストレードは気の抜けた顔で倒れた。ボロボロになっている影龍の偽物も、ドサッと地面に倒れ込んでいる。

「勝った……」

 俺のその一言で、張り詰めたマイカさんの空気が一気に緩んで霧が晴れた。マイカさんが術を解除したのだろう。俺達は一安心して座り込んだ。一度倒れ込んだら、どんどんと意識が遠のいていく……恐らくは、何度も消耗したり急回復したりを繰り返したせいで内部の負荷が高まっていたのだろう。心臓の鼓動音が頭にまで響いてくる。すると、影龍が最後の力を振り絞るように俺達へ走って来た。

「アンタ達に術を奪われるのだけは……御免だ…………無意味だとしても、ここで術を使い潰させてもらう……」

 並の覚悟では自分の魂を燃やし尽くすだなんて不可能だろう。奴のマインドには見習うものがあるが、状況としては最悪だ。すると、マイカさんが走ってくる影龍の前に立った。

「●●ッ!! 目を覚ましてッ!!」

 マイカさんのその一言で、影龍は足を止めた。何かひどく困惑しているような表情をしていた。

(●●……あぁ、それってヒロの本名かな……?? ダメだ、頭回らん)

「さすがは影龍……持ち主の手元を離れてもその意志は健在のようですね」

「……なんで……確かにアタシはフォーマットを━━」

「もう忘れたのですか? 茜術とは、精神力の集合体。持ち主の意志が強ければそれだけ力を発揮します。私がこうやって無謀にも立ちふさがったのは、彼の意志の強さを信じていたからです。あなた達にはどうにも、その感覚が理解できていないのでしょうが……それでは術がブレますよ」

「……どうやら、アタシの完敗みたいね。認めるわ。ただし、術はあげない。最後の悪あがきはさせてもらうよ……」

 レストレードはそう言うと、ゆっくり目を閉じた。呼吸が明らかに弱くなっていくのが分かる。すると、影龍が少しずつ崩れていく。ローポリゴンな表面がポロポロと剥がれて、粉のように漂って下のグラウンドの方へ飛んでいった。

「さて、私たちのできる事は終わりましたね。後は……彼を信じましょう」

 マイカさんはまだ余裕で立っているが、俺はもうついさっきの記憶も無いくらいに疲れている。そのまま気絶するように眠りについた。

━━━━━━━━━━━━━━━一方その頃、グラウンド━━━━━━━━━━━━━━━

「だぁ……畜生ッ」

「アンタも相当にしつこいわね、そろそろ諦めたらどう?」

「簡単に諦められねえんだよッ! お前とは違ってなぁ!」

 俺はなんとか少量の茜力で作った汎用属性だけで耐え凌ぐ。しかし、ハナの方が圧倒的に優勢なのもあってか押され気味だ。あのオンナに取られた影龍が返ってくれば余裕で勝てるんだが……いや、マイカが向かったんだ。きっと今頃には始末してくれているはずだ……

「殆ど生身でよくアタシと勝負になるよねぇ……ホントにビックリなんだけどさ、もう終わらせようか」

 ハナはそう言うと、カウンター前提の構えで刀を持った。

(どうする……攻めるか? それとも様子見か? いや、だけどもし今術が返ってきたら恐らく蜘蛛の糸で逃げられちまう……さすがに影龍が返って来てすぐに生成して乗って飛んだり、混獣化(エクリプス)で自力で追うのは不可能。今ここで取り逃すのは一番厄介だ……どうするッ!? クソッ足が震えてやがる……何をビビっているんだ俺は……)

 そこで俺は、マイカの御面を守り抜いた新入りの事を思い出した。

(そうだった……何を迷っているんだ俺は。信じるって決めたじゃねえか。もし術が返って来ずに斬られても、きっとマイカ達がなんとかしてくれる。俺は突き進めば良いんだ)

 もう迷いは無い。俺はダッシュでハナの方へと殴り掛かる。防御なんて一切しない、攻撃に全振りした今俺が出せる最強の一撃だ。

「数百年続いた因縁が、こうもアッサリと終わるなんて思わなかったわね。さよなら、●●」

 ハナが俺の胴体に向かって斜め下に刀を振り下ろそうとした。

「うおぉあああああぁぁぁーーー!!!!」

 俺がヤケクソに叫んだ所で丁度、俺の術が俺の体に戻ってきた。

(マイカッ、リクッ、成し遂げたんだなッ!! 感謝するぜ!) 

 すぐに胴体へ厳重なMDSを張る。ハナの刀は俺の体を切断するには至らず、ほんの小さな切り傷ができただけだった。一瞬で状況を理解して焦っているハナの顔面に、俺の強烈な拳が入る。茜力も汎用属性もフルに乗せたパンチは、ハナのMDSを粉々に砕いて意識を飛ばした。

「っっっしゃオルァアアアアアアァァァァッ!!!!」

 勝利を噛み締めて、俺は大絶叫する。酸欠でクラクラになるが、それさえも快感に思えた。

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