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第二ラウンド

 一時間弱待って集まった契約者の人数は九十二人。抗争が始まる前の約半分となってしまった。しかも、戻ってきた人達も無事というわけではなさそうだ。

「思ったよりも少ないな……外でもかなり苦戦を強いられたみたいだな」

 ヒロは気づいたら、フードが付いた黒い外套を纏っていた。さすがに全契約者に顔を見せるつもりは無いのだろうか……

「残る敵将はレストレードと……レスパリ側の警備と守護をしてる幹部達かな。どちらにしろ、俺とマイカ……あとコウとユイに勝てる奴なんていないだろう。範囲攻撃の方が効率は良いが……あいにくカイセイはもう居ないからな……」

 ヒロの顔は少しだけ曇っている。当然のことだ。五百年連れ添ってきた仲間の一人がこうもアッサリ殺られてしまっては憤りも感じる事だろう。

「お疲れさん……」

 立ち話をしていると、コウさんが話しかけてきた。コウさんもそれなりに疲弊しているようで、額や腕から少し血が流れている。

「コウさん! 生きていたんですね! 良かった……勝ったんですか?」

「いや……取り逃がした。残念な事に、遅延だの軌道操作だのを食らって見失ってしまった」

「まあ……お前が生きてて良かったよ、コウ。それで、何か用か?」

「あぁ、その事なんだが……あそこのグラウンドの端っこの……ブッ倒れてる紅蜘蛛華の横にいる奴って見覚えあるか? 俺はあんな女見たこと無いんだが」

 マトモに運べる体力が残っている人が居ないとの事で放置されていた気絶している紅蜘蛛華の体の近くには、確かに見慣れない術者? が立っていた。茶髪に長いポニテ……身長は百六十五くらいか……確かに、あんな奴は拠点内で見たことがない。そう、”拠点内では”見たことがないのだ。

「なあヒロ、アイツって……」

「お前もやっぱりそう思うか? ちょっと念の為に俺が声を掛けるよ」

「あぁ、頼んだ」

 ヒロが、歩いてレストレードらしき女に近づく。まだ俺達に気付いていないのか、その女は呑気に紅蜘蛛華へ近づくと、軽く手を触れようとした。

「そこで止まれ! お前、十契の人間じゃねえな!?」

 ヒロの怒声が響き渡った瞬間に、その女は急いで紅蜘蛛華の首元を軽く掴んだ。その瞬間に、紅蜘蛛華と壁の隙間から大きな蜘蛛の足が出てきた。そうして振り返った女の顔は……確かにダン・レストレード本人のものだった。

「……ッ!! 野郎! やりやがったなッ!!!!」

 紅蜘蛛華はダルそうに起き上がった。

(なんでだ!? レストレードに回復系の能力なんて無いはずじゃ……。まさか、アイツの術は吸い取った茜力を溜めておけるのか!? 俺はまだアイツの術を殆ど知らないが……不可能じゃあない。外で戦って蓄えた茜力を紅蜘蛛華に注いだのかッ……!? どっちにしろかなり厄介な事にはなったな……)

 起き上がった紅蜘蛛華は、淡々と守護獣(ガーディアン)を出すとヒロへ攻撃した。そして、動揺しているヒロに向けてレストレードが手を触れた。すると、生成途中だったヒロの斧が消失する。

(マズイ!! ヒロの術が奪われた!)

 そう思った瞬間には遅く、紅蜘蛛華の守護獣(ガーディアン)馨華蜘蛛(リリー・スパイダー)の攻撃がヒロに直撃する。するとヒロは呆気なく吹き飛ばされた。思いっきり砂の地面を滑る。

「お前ら全員逃げろッ! コイツは今のお前たちじゃダメだ!」

 ヒロがグラウンドにいる一般契約者達に叫んで語りかけた。すると、幹部未満の人間達は全員逃げた……薄情に思えるが合理的な判断だろう。この場に残ったのはボロッボロの一眼、二眼、四眼、五眼……ピンピンしてる幹部は九眼のみ。気づけば既に、残された幹部はこの五人だけ。九眼は回復系の術だから戦力としてはカウントできない……つまり、マトモに立って戦えるのは俺一人だけだ……

(ベストなのはレストレードをすぐに殺してヒロの術を復活させる事だ……紅蜘蛛華はさっき立ち上がる時に少しフラついていた。つまりは完全回復した訳ではないんだろう。茜力を注入されて起き上がっただけで、傷や出血は治ってないな……錆びまくって歪んだチャリに、油を差して無理矢理動かしてるようなもんだ。ヒロの術が回復すれば勝機はある)

 俺は刀を抜く。五十年前に戦った時にはまるで相手にならなかった奴と、たった今から戦う……ありえないくらいの緊張だ。ジェイキーの時とは違って、今回は一人で戦わないといけない。というか、完全に単独でミッションをこなすのも久しぶりだ。俺はレストレードに近づいた。

「アビリティフォーマット、『影龍』」

 レストレードがそう呟くと、奴の肩越しから影龍のような形をした白い守護獣(ガーディアン)が出てきた。白い……というより、まだ色付けされていない無色の3Dモデルのように見える。造形も粗く、細かな鱗の面が真っ平らになっていたり、角の曲線がカクカクとしている。

「あー……やっぱり、完全に落とし込むのは無理か。アタシの術でもフォーマットできないって……どんだけハイレベルなんだろ」

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