一斉集合
俺は旧放送室に駆け込むと、一斉放送ボタンを押した。これは、超緊急事態用に全契約者のスマホに強制的に一方的な通話をかけられる便利なボタンだ。
「本部拠点が襲撃にあっているッ! 外の警備に行っている契約者達……特に幹部は今すぐ帰って来てくれ!!!! これは訓練やジョークじゃない! 本当の緊急事態だ! 頼む!」
俺はそう叫ぶと、ボタンから手を離して再びグラウンドに戻った。
(とりあえず呼び戻した……。今外に出て警備しているのは三、四、八、十眼だ。その内で三眼は恐らく殺られた……他は無事だと良いんだが。裏切り者の十眼は間違いなく生きているだろうが、他はどうなんだろうか。というか、コウさんとレノはどこに行ったんだ? それに、ユイさんは無事なんだろうか……一眼と二眼は不明として……もしかして確実に生き残ってる幹部って五眼だけか!? 六眼は殺られたってサユさんが言ってたし……九眼はマイカさんの治療をしてるだろうしな……)
すると、俺のスマホに電話がかかってきた。番号からして組織の人間だが……誰なのかは全く分からない。とりあえず電話に出ると、一度聞いた事のある声が耳に届いた。
「あの……! 今、全力で走ってマイカさんの御面を……本人の所へ届けているので…………少し向かうの遅れます!」
それはリセットをする前の隙を突かれて完全敗北をした世界線で、死ぬ気でマイカさんの御面を守っていた新入りの声だ。
「お前……! よく俺の番号が分かったな」
「貴方に憧れてますから……声も覚えていたんです!」
「そうか……というか、隠し場所分かるのか!?」
「はい! さっきまではとにかく拠点の戦いから御面を守ろうと闇雲に逃げていたんですが、たった今リクさんが一斉放送をかけてくれたでしょう! それで、さすがに緊急事態となったのか九眼の方に連絡したら場所を教えて頂けました! 今急いでそこへ向かっていますッ!! 九眼の方の話によれば、マイカさんは後は御面さえあればすぐに復帰できるそうです!!」
「了解した! お前が御面を持っている事は他の誰にも言わないでくれよ! 頼んだぜ!」
俺がグラウンドに戻ると、既に敵の龍の体にかなりの数の傷が付いていた。なるべくバレないようにこっそり近づいて、二人の会話がギリギリ聞こえる程度の距離まで接近できた。
「クッソ……お前! ナメんなよぉ!」
「ナメるも何も、テメェが弱いからだろうが」
どうやら、ヒロの方がかなり優勢のようだ。
「何故だ!? まず間違いなく茜力の総量も耐久力も俺と俺の守護獣の方が上のはず……何か小細工をしやがったのかぁッ!! 汚えぞ! 零眼!」
「あえて言おう、俺は何も小細工なんてしちゃいない。それに、お前のお仲間のアバズレクソ女とその守護獣……馨華蜘蛛をシバくのに結構な力を消費しているのも事実。単純な余力で言えば、お前の圧勝だろうよ」
「なら何故だ! 俺が遅れを取るはずはッ……」
「お前、レスパリの蛇野郎を取り込んだだろ? 新しくなったテメェの守護獣からは、確かにバジリスクの気配がするぜ。あとウチの大切な部下。カイセイも……取り込んだな?」
「へっ……鈍感なテメェでも流石に理解できたみてぇだなあ! そうだぜ! テメェが大事にしてた最上級幹部をブッ殺して取り込んだぁ!」
「……得意げに語ってるとこ悪いんだが、原因はそれだぜ?」
「……は?」
「短時間で強力な術を取り込み過ぎている……茜力の総量もかなり増えただろ、そんな急激な変化に体が追いつける訳がない。それも術者歴も精々二百年ポッチの坊っちゃんが急に最強に成ろうなんざ、無理な話だぜ。カイセイはなぁ……俺が手塩にかけて大事に術を育てた。そして、五百年以上ずっと一緒に過ごしてきた! 大切な仲間だ! アイツの凄さは俺がよく知っているッ! テメェに奪われた『凶星』! 返して貰うぞッ! チャラつき野郎が!」
そこで、俺の肩に何かが触れる。急いで振り返ると、そこにはショウタさんと四眼のクリスさん、さらにサユさんがいた。
「呼ばれて来たんだけどさぁ……あのデッカイ方の龍って何? リク君」
「俺も……よく分かりません。ただ、あの龍は敵幹部にバジリスクと……三眼のカイセイさんを取り込んでいるようです」
「「「ッ!??」」」
「驚いている所申し訳ないのですが、誰か他の人の情報は知りませんか?」
「いやぁ……知らないね。俺が偶然にクリスさんを見つけたんで、一緒にオウルベルドに乗って来たんだよ。途中でサユさんがぐったりしているのを見つけたんで、クリスさんが茜力を分け与えて復活させたんだ。だから、今の所増援はこの三人だけだね……」
「そう……ですか」
(思ったより少ないが……どう動くべきか……)




