天龍、誕生
俺達はレノと距離を取りつつ、お互いの行動を読みあって攻撃を加えていく。だが、やはりレールによる軌道操作と遅延は強力だ。
「リク君! この調子で攻めよう、勝てるよ!」
「了解です!」
レノも、このまま行けば負けだと理解しているようだ。そして唐突に自分の足元に軌道操作のレールを出すと、遅延のレールと併用して物凄いスピードで俺に突っ込んできた。
(嘘だろッ!? 二種類合わせて使えるのかよコイツ……)
あまりにも速すぎて対応できず、俺は脳天に汎用属性の乗った強烈なパンチを受けた。見事にMDSが砕けて、俺は意識を失いそうになる。
「まずは一人、これでやっと邪魔が消えましたね。一眼さん」
「リク君!? 大丈夫か!」
俺は、なんとか力を振り絞って片腕を上げた。それを見てコウさんは酷くホッとしたような表情をする。
(ヤベェ……立てん。なんとか生きてるが……このまま寝っ転がってたら死ぬぜ…………コウさんのお陰でトドメは刺されずに済んでるが……時間の問題だぜ)
━━━━━━━━━━━━━━━一方その頃、シンタロウ━━━━━━━━━━━━━━━
こんな事聞いてない……領土の堺だから危険が多いのは知っていた。だが……幹部が直接殴り込んでくるなんて……目の前の幹部は、俺の恩人……七眼前任のナイアル・レンを殺した仇だっていうのに。俺は何もできない。
「貴方もしぶといですねぇ……」
「うるっせぇ!」
目の前の強大な守護獣……バジリスクには流石の俺でも消耗しすぎて相手にならない。よって三眼のカイセイさんが対処してくれているが……それでも、かなりの接戦だ。レスパリだからってナメてたが、流石は最古参の幹部なだけはある。
「シンタロウ君! そこに倒れてる子を連れて離れて!」
「カイセイさん……まさか、アレを??」
「そうだ! 速く!」
「おっと……ソレは困るな。私も逃げるとしよう」
蛇の幹部も逃げようとしてる。俺は焦って銃を撃つと、弾丸を術で回転させて曲げてボロい看板に当てる。すると、看板の支柱がボキッと折れてバジリスクの前に落ちた。
「逃さ……ねえよ……」
「ッ! 余計な事を!!」
蛇の幹部が振り返った頃にはもう遅い。俺は部下を連れて十分な距離を取っている。
「カイセイさん! やっちゃってくださいぃッ!!」
「並行空間、解放ッ!! MGF!!!!」
その瞬間にカイセイさんとバジリスク、その上に乗っていた蛇の幹部の姿が消える。
(よしッ! 上手く並行空間に引きずり込んだな! 後は戻ってくるのを待つしかない……)
そして数十秒程待っていると、二人と一匹が帰って来る。お互いにかなりボロボロで、並行空間内での戦いの壮絶さを物語っていた。
「ハァ……ハァ……ヴエ……」
「ハァ……結構効いてる見てぇだな……キザミさんよぉ。俺も無事じゃあないが、テメェをここで殺せるなら死んだって構わないぜ!」
「最初から死ぬ事を想定に入れてるから……私如きに苦戦しているんじゃないですか?? ふぅ、それにしても……相変わらず十契は視野が狭くてやりやすい」
「は?」
「カイセイさんッ!! 後ろぉ!」
正体不明の鳥型の守護獣が、急にカイセイさんの背後に現れた。そしてクチバシでカイセイさんを突き上げた。同時にカイセイさんのMDSが割れる。
「ぐあぁ……」
「ほい、一人ゲットー」
「お前……は、製作所の……そうか。テメェらも一枚噛んでたんだな、だからこんな大規模な……頭の悪ぃレスパリじゃ考えつかないような事が……そうか。そうだったのか」
「お、俺の事知ってる? さすがは幹部のナンバースリー。益々、術の性能に期待ができるな……ってことで、お前を取り込む」
「……」
「なんだ? 遺言くらいなら聞いてやるが」
「予言……しよう。お前は必ず俺達のボスが仕留める。先に逝って、お前が空色に焼かれて地獄に堕ちて来るのを待っているぜ。大間抜け」
「……なぜ、そう言い切れる?」
「俺達は……零眼を信じてる。それだけだ、幹部とやり合ってさらに横槍も食らったって言うんならあの人だって俺の死を責めないはずだ……」
「その信頼の先には何も無いかもしれないぜ? 命を掛けてまでした期待を裏切られるかもしれない、とは考えないのか?」
「俺……は、俺達は……あの人……が……大好きだから……」
「……死んだか。カイセイだったか? お前の精神性には心底驚いたぞ。同時に呆れたがな」
すると、鳥の守護獣はフイッと頭を上げてカイセイさんを空中へ放り出すと、そのまま飲み込んだ。
(そんな……カイセイさんが殺られた!? 嘘だろマジかよ…………)
すると、蛇の幹部がバジリスクに乗って鳥の男に近づく。
「天代 叶依だったか……?? 大義だ。よくぞ三眼を討ち取った」
(クソッ……あの二人が相手じゃどうにもならねえぞ。とりあえず今は物陰に隠れてるが……いずれ見つかるかもしれねぇぜ。この事をしっかりと拠点の皆に伝えないと……)
しかし、鳥の守護獣は急に飛び上がると加速してバジリスクの上に乗っている蛇の幹部を掴んだ。そしてそのまま噛み砕いて飲み込む。
「テメェまずは敬語だろうがよぉ、何偉そうにしてんだ?」
するとバジリスクがブチギレて鳥の方へ攻撃する。
「あぁ、お前自律できるタイプの守護獣か。忘れてたぜ」
勢いよく頭を伸ばしたバジリスクだが、すぐに勢いを失ってしまう。体が上手く動かせないようで、悶えている。そりゃあそうだ。急に本体を失ったんだから、いくら自律型とは言え急に放浪種として生きれる訳がない。カナイという男は、その隙を逃さずにバジリスクの頭部へ組み付いて深くクチバシを突き刺す。
そしてその細い体のどこに入るんだというレベルで、バジリスクを貪り始めた。
(何だコイツ……レスパリの仲間じゃないのか!? 一体どういう事なんだよ……裏切りか……??)
すると、鳥の守護獣が震え始める。
「あぁ、すまないね。一旦戻っていいぞ、衰鱗鳥」
男の合図で守護獣が引っ込む。
「さて……これでもう計画の下地は完成したな。後は……零眼達を殺せば完璧だ。さて、新しい姿を見せてくれよ、衰鱗鳥」」
男がそう言うと、瓦礫が散らばる場所から一匹の龍が飛び出してきた。東洋の絵巻物なんかに描かれているような風貌の龍だ。デカい。明らかに、バジリスクを取り込んだ事による変化だろう。
「んん〜〜、実に美しい。何と名前を付けようか……そうだなぁ、零眼の龍と対にするために『天龍』としようか。じゃあ、奴らを丸ごと殺しに行くぞ! 天龍!」
男はそう言って龍の頭に飛び乗る。
(マズイ状況になった。どうしようコレ……あ、ボス達を殺しに行くって事は多分拠点に向かうんだよな……だとしたら俺もどうにかしてあの龍に乗っからないと)
俺は意を決して、飛び出す寸前の天龍の尻尾に飛びついた。全体が固い甲殻や鱗に包まれているので、なんとかバレてないようだ。




