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遅延路線

 俺は、なんとかしてレノを噴水から引き摺り下ろせないかと考えた。

(どうする……?? 飛び道具も直接飛びかかってもレールでズラされちまう。でも池の中を歩いて近づいたとして……噴水の高さは約二メートル。どちらにしろ攻撃が当てずらい……本当に打つ手無しか??)

「リク君、こんなお願いをするのは申し訳ないんだが……俺が奴に強烈な一撃を叩き込むから、アイツの気を引いてくれないか? いくら地形が有利とは言え……さすがに弱点があるはずだ。今まで戦っていて、全く相手にならなかった奴は存在しなかった。コイツも例外ではないはず」

「……分かりました。じゃあ、俺がとにかくアイツに攻撃するのでコウさんに追撃を任せます」

「ありがとう。じゃあ、頼む」

 俺はコウさんのゴーサインに合わせてレノへ突っ込む。しかし、池の縁の手前程で急減速。さらにはレール枠から出た加速を、軌道を操るレールで操作されて壁に叩きつけられる。だが、俺はそれでも怯まずに次の攻撃を仕掛ける。

 だが、結果はずっと変わらない。唯一マシだと言えるのは、レノの固有術そのものには特筆した攻撃力が無いという事だ。主に汎用属性で殴ってくる。しかしコウさんがいると追撃まで加える余裕が無いようで、俺はずっと無傷なままだ。コウさんはデカいナイフを持ったままで、神妙に俺達の攻防を見ていた。

(コウさん……いつ来るんだッ!? 茜力はまだまだ十分だが……体力がしんどいぞ…………)

 しばらくすると、コウさんは急に走り出した。そして、遅延レールの攻撃を見事にスラスラと掻い潜ってレノへ飛びかかる。だが、やはり軌道を操るレールを使われてしまう。

「今だッ! リク君も攻撃を!」

 ちょうど次の攻撃を開始しようとした俺に合図が掛かる。言われた通りに攻撃を仕掛けると、今度は軌道を操作されずにレノへと斬りかかれた。当然MDSで防がれるが、今まで全く触れられなかった奴に一撃加えられたのはデカい。だが、空中で切った俺のガラ空きの胴体へレノの蹴りが刺さった。俺は吹っ飛ばされて中庭の地面に叩きつけられる。コウさんの方は一度軌道をズラされたものの、着地してすぐに踵を返して再び斬り掛かった。すると、今度は軌道を変えられずしっかりと攻撃が入る。コウさんはそのままレノを掴むと、無理矢理に噴水から引きずり下ろした。これでやっとマトモに戦える。

「よし……お前の術には、なんとか適応したぞ」

「……ビックリですよ。まさか私の術との相性の悪さを克服するなんて……キャリアの違いなんですかね? ただ、やはり私の予想は当たってたみたいですねぇ……アナタの術は、『相手に確実に当たる攻撃の軌道を作る』といった感じでしょう? だから、強制的に軌道を操作する私の術とは相性が悪い……それすら打ち破るとは、アナタは一体どんな戦いを経験してきたんでしょうか……」

「勘違いするな……俺なんかよりもユイやカイセイ、マイカの方がよっぽど凄い。俺は、偶然にも術に恵まれただけだ。一眼という地位も、他推で就いた」

「理解できませんね……なぜ、その強さを持っておきながら野心を持たないのですか? アナタがその気になれば、十契の幹部以外の人間全員と同時に戦って勝つ事だってできるでしょう? 私ならそうやって組織を乗っ取るか独立します」

「お前達の組織の、そういう所が昔から嫌いだった。部下はボスの考えに似るから、レスパリの奴らは全員そんな感じなんだろうな……だからこそ、ウチのボスとお前達のボスは一生分かり会えない!」

 コウさんは、ナイフを構えた。

「第二ラウンドだ。いくぞ」

「第二ラウンド? 最終ラウンドの間違いでしょう。あなた達二人は今ここで私が殺す」

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