情動再生⑥
「リク、斬撃の溜めは継続されてるか? そんで、何回くらい溜まってる?」
「今は確か七回……しっかりと継続されてるぜ」
「分かった。それぐらい強化できれば、消耗したアイツを倒すのには十分だ。正直、あのジェイキーとかいう野郎は今まで相手にしてきた奴らとはベクトルが違うからかなり苦手だ。パワーをぶつければ潰せるヤツなら真面目にやらなくてもイケるが……今回ばかりはそうもいかない。倒せるカギとなるお前を前に出して死なせるわけにもいかないから、俺が一旦アイツを極限まで消耗させる。その隙をお前が突いてくれ」
「わかった。何か手立てはあるのか?」
「……少し暴れる」
ヒロはそう言うと、影龍を着地させて降りた。俺もそれに続く。そしてそれを確認したヒロは、影龍の口先を優しく手で触れると顔の近くに引き寄せた。
「久しぶりに、アレをするよ」
ヒロがそう言うと、影龍は液体のように不定形になってヒロに纏わりついた。そして、形が定まると……
「ヒロ……それって……?」
「『混獣化』。コレは、俺が編み出した俺だけの技。影龍と完璧に一体化するんだよ」
ヒロは、半人型のドラゴンのような姿になっていた。四肢や頭部は影龍のようになり、翼と尾が生えている。声も、人とはかけ離れたものとなっていた。サイズも、普段のヒロより二周りほど大きくなっているように見える。
「いくぞジェイキー」
ヒロは飛び上がって翼で数回ホバリングすると、次の瞬間目にも止まらぬ速度でジェイキーの方へ飛んだ。衝突してドッという音がした瞬間に、ヒロはリプレイされて再び飛びかかっている状態となった。今度はジェイキーも身をかわす。どうやら、ジェイキーは自分自身の行動をリプレイで戻しても怪我や消耗は戻せないみたいだ。
そして二回目を避けられた事で背中を晒してしまったヒロに、ジェイキーの汎用属性を使った攻撃が刺さる。しかしヒロはすぐに上昇しながら急旋回し、ミサイルのようにジェイキーへ突っ込む……と見せかけて着地し、ブレスを放ってから鋭利な前肢の爪で脇腹を切る。
(すげぇ……なんてハイスピードな戦いなんだ……)
俺はつい立ち尽くしてしまった。そうしてボサッとしている間も、両者は目にも止まらぬ速度で頭脳とフィジカルを最大活用した戦いをしている。
だが数分間見ていて思ったのは、やはりジェイキーが劣勢だと言うこと。確かに、任意のタイミングで時間を戻したり進めたりする能力というのはかなり強力だ。しかし、うちのボスの反応速度と一撃の重さの前では結局完全に翻弄することは不可能。
(もうすぐ勝負がつきそうかなー……ま、一安心だぜ)
するとジェイキーは一気にヒロの行動を五秒程リプレイして、同時にジェイキー自身は時間を先行させ距離を取った。
(……ッ!? 何をしてるんだアイツは……もう茜力の残量も最大値の十パーセントを切ってるくらいなはずなのに……あんなに一気に術を使ったらさらに苦しくなるだろ…………)
「いやぁ〜、ビビったぜ。お前がこんなにも強かったなんてなぁ、零眼よぉ」
「そりゃあこっちも同じ事。お前の所に嗄れたジジイ幹部がいただろう、アイツは俺が殺したんだが……あまりにも弱かったもんで驚いてた。お前ら幹部連中は全員そういうもんかと思ってたがな……認識を改める良い機会になった。ってことで殺す」
「殺す……か。そうだな、今の俺は生命力も茜力もほぼ尽きている。お前に殺られるのは時間の問題だろうよ……だがッ!! お前は俺が全ての能力を出し切っているとでも思っているのかぁ!!!!」
すると次の瞬間、ジェイキーを中心に風景が大きく歪む。捻じられているような、引き伸ばされているような……今までに体験した事のない感覚に、思わず平衡感覚を失いそうになる。
「俺の最終奥義ィ!! 負った傷ごと全部纏めて世界をリプレイするんだぁッ! コレでテメェらの俺の術に関する記憶は全部パーになるし、負わせた傷もチャラ! 位置も元に戻るぜ! そしたら排水管を通っている時点でオメェらを殺すとするかなぁ!」
(ヤベェ! なんだかヤベェ事になっちまったぞ! どうする!?)
ヒロの方をチラッと見ると、直立不動でジェイキーの方をじっと見つめている。
「この世界丸ごとリプレイだ! 零眼ッ!!」




