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情動再生①

 落ち着かない気持ちで日々を過ごしていると、俺はある日ボスに呼び出された。なぜ俺が呼ばれたのかは全く分からず怖いが、嫌とは言えないので大人しく向かう。

「……来たか、リク」

「はい…………それで、どのようなご要件で?」

「マイカがレスパリ幹部に襲撃された事は知っているね?」

「はい。当日に知りました」

「その件についてなんだが……俺はマイカを救出する時に、その幹部と戦ったんだ」

「そうですか……それで??」

「その幹部の固有術がどうにも厄介でな……言葉で伝えると不要な先入観を与えてしまうかもしれないから細かくは言わないが……君の固有術がカギになってきそうなんだ」

「俺の固有術……ですか??」

「そう。君の『打撃の威力を上げていく』という効果が、重要になってくる。そこでだ。君にはレスパリ幹部、明平ジェイキーの処刑任務に同行してもらいたい。行くのは俺と君だけだ」

「え……いや、自分では役者不足では??」

「俺が守る。だから、リク君には攻撃をメインでやってもらいたい。俺の攻撃では決定打に欠けるんだよ。理論上は、リク君の威力は無限に上げられるだろう? それも重要だし……まぁ、詳しいことは実際に戦えば分かるはずだ。ただし、これは下手すれば死ぬ可能性がある。だから、無理について来て欲しいとは言わない。あくまでもお願いだ。これを断っても、君に対するペナルティや冷遇、減給は一切無いと約束しよう」

「そんな事急に言われたって……」

 正直、かなり迷う。この組織そのものに恩義は感じているが、死にたくないしハルがすぐ目の前にいるかもしれないのにクタバる訳にはいかない。しかし、ここで首を横に振るのは人としてあまりにも不義理。

「……分かりました。では、同行致しましょう」

「おぉ! ありがとう……助かるよ! 明日さっそく向かうから準備をしておいてくれ!」

「はい……」

 まだ迷っているが……俺の一言でホッとしたような声になったボスの姿を見ると、やっぱり無理ですとは言えない。俺は軽く挨拶すると重い足取りでボスの部屋を出た。

(ジェイキー……五十年前に相手した時は、何が何だかよく分からないまま逃げちまったが……今なら戦えるのか……!? いや、多分無理だ。ボスが守ってくれるとは言っているが、自信が無さそうだ。茜力の根本的な原動力は精神。見るからに心が揺れ動いている今のボスではダメなんじゃないか……?)

 そんな事を思いつつ眠りにつくと、無情にも明日はやって来た。

(はぁ……不安だ)

 俺は武器を手に取ると、まだ一部の電気が消えている薄暗い拠点を歩いた。すると、ヒロと出会う。

「おぉリク、お疲れさん。ボスから聞いたぜ? 大変だなぁ」

「あ、おう。そうだな〜結構不安だ……あの人にはちょっと申し訳ないが、見るからに精神が不安定だ。アレでベストコンディションを出せるのか甚だ疑問だぜ。それでも、俺より格段に強いのは間違いないんだろうが……」

「……そうか。まあ頑張れよ」

「おう、ありがとなー」

 俺は眠い目を擦りつつ展望台に向かう。そして、屋根上によじ登ると朝日を浴びながらタバコに火を付けた。吐いた煙が朝日に照らされて溶けていくのをぼんやりと眺めていると、下から物音が聞こえてくる。

(あぁ……ボスが来たんだな)

 屋根上の縁に手が掛けられる。そして登ってきたのは……

「よう、お疲れちゃーん」

「ヒロ!?」

「お前に事実を隠し通すには、少々頼りすぎたからな。もうこの際明かしてしまおうと思ったんだ」

「いや、待てよ! 何の事を言って……」

「お前だって薄々気付いてたんじゃあないのか?? ボスは俺で俺はボスだ」

「え、何言ってるか全然分からないんだが……」

「あー……じゃあコレで良いか?」

 ヒロはタバコを一本咥えると、片手にボッと空色の炎を生み出して火を付けた。そして、ゆっくりと吐いた煙がうっすらと龍の頭の形になっていく

「……マジかよ」

「そう、俺がボスだ。十一眼は、組織内の監視のための姿」

 本格的に強くなってきた朝焼けが、ヒロの顔を照らす。すると、ヒロの瞳は空色に光った。

「隠していてすまなかったな。だが、今はその話は後回し。コレ一本吸い終わったらすぐに向かうぞ」

「え、あぁ……分かりました」

「んん? あぁ、敬語なんて要らんよ。面倒くせえ」

「そうか……じゃあ、何て呼べば良い?」

「ヒロのままで良いぞ。なるべく何も対応は変えるな。コミュニケーションに支障が出るだろ」

「分かった」

 正直微塵も状況を飲み込めないが、ニコチンで無理矢理脳を落ち着かせる。数日ぶりの快晴の朝焼けに照らされた俺達は、一言も発さず静かにヤニを嗜む。

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