すれ違い
今日からマイカさんとボスが片方ずつ警備に出るとの事だが……俺が警備しているような海岸沿いには滅多に来ないだろうし、特に気にする必要は無いだろう。
俺は、任務開始前にスラム外にある昼間から飲める居酒屋に立ち寄って適当に飲む。もう七月のアタマだというのに、依然雨は止まないままだ……俺は徒歩での移動を断念してバスでスラムに一番近い場所まで行く事にした。
ハルがスラムの外で生きているという可能性に賭けて任務前にフラッと探してはいるが、やはり見つからない。レスパリを片付けない事にはどうにもならないのだろうか……だが、その現実と向き合う度にシンジさんのように死んでいった人達の姿が思い浮かぶ。自分がやっている事が本当に正しいのか? そんな風に考えてもどうしようもないような事を思ってしまう。
(そろそろ行くか……)
俺は最寄りのバス停を目指して歩き始めた。
━━━━━━━━━━━━━━━一方その頃━━━━━━━━━━━━━━━
「これで大方の情報収集は終わりましたね……」
「そうだな。まあジェイキーさんが後はどうにかしてくれるだろう」
「じゃ、俺はそろそろ帰りますが……ハルさんはどうしますか?」
「俺はもう少しだけここらへんに居ようかな。茜術持つ前の思い出があるんだ」
「そうですか……じゃ、俺は十契に見つかるの怖いんで帰りますね。ハルさんみたいに強くないですし」
「ん、お疲れさーん」
俺は部下を軽く見送ると、また別の場所に向かおうと目の前にあるバス停へ向かった。そして、日焼けして真っ白になったチープなベンチに腰掛ける。時刻表を見ると、俺が行く予定の場所へ向かうバスは少し待つ必要があるみたいだな。
(はー暇だな。誰か来ねえかな)
大雨がプラ製の庇を打つ騒がしい音だけが、俺の耳に届く。そろそろ雨も止む時期だろうか。
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バス停に到着すると、一人のオッサンがベンチに座っていた。腰に銃を携えているが、ここらでは護身用として持つ人も居なくはないし、俺も四尺刀を持っているので人のことは言えない。
「隣、よろしいでしょうか?」
「ん? あぁ、どうぞどうぞ。若いのに丁寧だね」
「ありがとうございます」
(なんだ、この声どこかで聞いたことあるような……いや、でもこのオッサンに会った覚えも無いしな……)
「随分と大きな刀を持っているね。護身用かい?」
「あぁ、はい。そうですねぇ」
「最近は物騒だからね……俺も銃を持ち歩いてるよ」
「そうですか……」
「ん? なんだ元気が無いな」
「あぁ、いえ……まあ最近色々とありましてね。自分の目標を見失いそうになってしまっているんです。目標に向かう気持ちを見失いそうになるのもそうなんですが……目標にたどり着いたその先に待っているのが闇だった時の事を想像すると、どうにも陰鬱な気持ちになります」
「そうか……目標が何なのかだなんて野暮ったい事は聞かないが……俺も似たようなもんだし」
「あなたにも、目的があるんですか?」
「あぁ、あるよ。俺はその目標を大事にしている。だが、そればっかりを追い求めて生きている訳ではない。一本の曲げられない信念があるのは素晴らしい事だ。だが、ずっと同じ味しかしない道筋を辿っていたってつまらないだろう? その先に酷い結末が待っていても、それ以上に楽しい過程を過ごせればきっと後悔は無いはずだ。人は生きる為に存在する。だが、生きるのに必要な最低限の事だけをして生きている訳じゃないだろう? 美味くて健康に悪い飯を食うのだって、そこまで眠くないのに二度寝するのだって、ゴム付けてヤるのだって、本来は必要無いが皆やっている。それは、死ぬ時に未練を残さない為なはずだ。つまりは、気楽に行こうってことさ。かと言って目標をおろそかにしてしまうと、本末転倒。全ての過程が無に帰す。そこらへんの調節は難しいんだよなぁ……おっと失礼。つい長々と説教を」
「いえ、良いんです。むしろありがたい」
そこで、俺が乗るつもりのバスが来た。俺は乗り込むと、振り返ってオッサンに声を掛ける。
「そうだ、あなたの名前は? 覚えておきたい。またいつか会えるかもしれないから」
「俺か? 俺は西浦 琶瑠だ」
「え!?」
そこで、バスの扉が無機質な音を立てて閉まる。そして、硬直する俺を他所にバスは発進した。
(ハル……なのか!? あのオッサン……妙に懐かしい気配だとは思ったが。いや、それにしても老けて……あ、茜術の開花が遅かったのか。ついに見つけたッ!!)
すると、俺のスマホに通知が届く。
(お、何だ? ……え、コレって、そんなまさか!?)
遅くなり申し訳ない。PC落ちて完成間近のデータが全部消えました。一時保存って大事ですね。




