アクアサーペント③
ボスはワイバーンを降下させて二匹の守護獣から離れた位置に着地すると、ワイバーンの頭にソッと手を当てた。
「『影龍』……アレを」
すると、ワイバーンの甲殻の隙間から目が開けられない程に強い光が放たれた。
(ウッ……眩しい!)
俺は反射的に目を閉じる。そして光が収まったのを瞼越しに感じて目を明けると、ワイバーンが立っていた位置に柄の長い一本の大斧が刺さっていた。
「ボス、ソレは……?」
「まあ見てなって。ユイ、ある程度落ち着いたみたいだしクラーケンを引っ込めてくれ」
ボスはそう言うと、 大斧をブーメランのように投げた。すると、大斧は真っ直ぐアクアサーペントの頭部へと飛んで行く。もう着弾する……という所で、なぜかボスは飛び上がって回し蹴りの動作をした。
(え……何やってんだろ。ここで蹴っても当たるわけ……)
そして大斧がアクアサーペントの片角にガッと切込みを入れた瞬間に大斧が消滅し、さっきまで横にいたはずのボスがその位置に移動した。そして、事前にこっち側で予備動作を終えていた回し蹴りがアクアサーペントの頭部に直撃する。
(……は!? え、ボスがなんでアッチに!? さっきまで横に……)
そう思って横を見ると、そこには回転を維持しながらホバリングしている大斧があった。まるで、ボスと大斧の位置が入れ替わったみたいだ。
そして強烈な蹴りでアクアサーペントを止めたボスは、着地すると大斧の方へスッと手を伸ばす。すると、大斧は引き寄せられるようにボスの手元へ飛んでいき綺麗に手中に収まった。かなり衝撃が強いのか、大斧をキャッチしたボスの手が、少ししなる。
「ユイさん……コレって??」
「ん? あぁ……アタシもよく分かってないんだけど……なんか、武器にかなり多くの茜力? 生命力? を与えて、自分の肉体との親和性を上げることで位置を入れ替える? って感じらしい。正直、異次元すぎて理解が追いつかないよ」
「あぁ、そうなんですね……」
そんなブッ飛んだ事を平気でやってのけるボスには、感心する。
「でも……」
「でも?」
「あの大斧を解禁したとしても、まだ零眼は本気を出してないね」
「そうなんですか!?」
「うん。とある奥の手があるんだけど……ま、流石に最終手段を使う程の相手じゃあないんだろうけどね」
「そうですか……」
ボスは、大斧を方に担ぐように持ってアクアサーペントに歩み寄る。アクアサーペントは、目にも止まらぬ速さで口を開けて水ブレスを放った。だが、ボスはそれに反応して大斧でブレスを真っ二つに切った。
(え、アレって切れるの?? 怖……)
ボスはそんな攻撃意に介さず、どんどんアクアサーペントに詰め寄っていく。すると、アクアサーペントは無理矢理地面の中へ潜った。さらに、ボスの背後から出たかと思いきやまた地面に潜り、右から出たかと思ったらまた潜る……。翻弄して、どこから攻撃が来るか分からないようにしているようだ。
一体、ボスはどうやって切り抜けるのか……。そんな事を思っていると、ボスはまたブーメランのように大斧を投げた。今度は真っ直ぐ飛ばず、弧を描いて曲がった。そして、ボスを中心にしてグルグル回りながら飛んだ。全方位防御しているようだ。
しばらくの翻弄の末、アクアサーペントは斜め後ろから真っ直ぐ噛み付くようにボスへ突進した。しかし、回り続ける大斧は正確にアクアサーペントの頭部を捉える。しかも、さっきのように位置替えして蹴らずに、回転ノコギリが如く高速回転でガリガリと甲殻を削っている。
あまりの威力に耐えかねたのか、アクアサーペントは体を丸めるようにして尻尾でボスのいる位置を薙ぎ払った。しかしボスは高いバク宙でそれを回避し、薙がれて真っ平らになった地面に着地する。
「ふぅ〜、今のはちょっと危なかったかな。ま、お前は所詮その程度。諦めろ」
アクアサーペントは既に片角が折れかけていて、頭部に大量の傷があり血が滴っている。一方ボスは、無傷。茜力もほとんど消耗していないだろう。
「ボス……勝てるんじゃないですか? ユイさん」
「そりゃあ……アタシは最初から負けるだなんて思ってないよ? ただ、負けなくても取り逃す事を懸念してた……このまま大人しく殺されてくれるような相手じゃないってのは、アタシがよく知っている。」
アクアサーペントは再び地面に潜行した。そして数回ボスの周りを出たり潜ったりした後にバッと地中から出たかと思うと、スラム外に向かう方向へ再び移動し始めた。ちょこちょこ移動しながら戦っていく内に、気づけばスラム外は目と鼻の先だったのだ。
「……ヤベェッ」
さすがのボスも焦っているようだ。




