アクアサーペント②
「俺がワイバーンでアイツを牽制するから、リクは攻撃に徹してくれ! ユイはサポートを!」
「はい! でも、俺の刀は弾かれてしまいますよ?」
「リクの固有術なら、きっと威力を増大させて切り込めるはずだ!」
「分かりました!」
俺は、改めて刀を抜いて構える。津波を起こされて海水が砂浜に残って地面が沼のようになっているせいで、強く踏み込めないが……きっとボスならなんとかしてくれるだろう。
「ねえ、零眼。アンタのアレを使えばこんな奴簡単に倒せるでしょ? お願い……使ってよ……それか、クラーケンの核部を使わせて」
「……すまない、ユイ。アレを使う事はできない。今はリクも見ているからな。クラーケンの核部を出すのも、少々リスクが高い。もうちょっと戦って不利そうなら使おう」
「俺……どっか行った方が良いですかね?」
「いや、気にしないで。今は、コイツを倒す事に集中しよう」
徐々に水が引いていく砂浜に、アクアサーペントの姿が見える。俺は、見つけた瞬間に切り込みに行った。今度は、甲殻を軟化させるために炎の汎用属性を纏わせて切った。すると弾かれずに切ることができたが、まだまだ浅い。そして、放電に警戒するために身を引く。
「リク君! 足元見て!」
ユイさんのその一言でふと足元を見ると、大きな水たまりの中心を踏んでいた。これでは離れていてもアクアサーペントの放電を食らってしまう……。だが既に遅く、アクアサーペントは放電を開始していた。電気のバチバチというエフェクトが水面を伝って俺の方へ来る。
(やべぇ……どうする!?)
焦る俺を、ユイさんのクラーケンの触手が引き抜いて助けてくれた。すると、アクアサーペントは猛スピードで、俺を掴み上げた触手に噛み付く。
ガクンとした衝撃と共に、俺は地面に投げ出された。アクアサーペントは、噛んだ触手に直接電気を流した後に俺の方へ向き直ると、直接噛み付くのは危険と判断したのか俺の周りを高速で這い回り地形をガッタガタにした後、捕らえようとする触手を放電で蹴散らして体当たりしてきた。舞い上がったドロ砂がクッションになってそこまでのダメージは無かったが、この状況が続くのはマズイ。ユイさんも、守護獣の消耗が本体にまで来ているようだ。
「クッ……コイツ、なかなかにヤるみたいね」
「ユイ、クラーケンの核部を出していいぞ」
「……マジで?」
「ああ……それしか切り抜ける方法は無い!」
「はぁ……できれば零眼に直接対処して欲しかったけど……しょうがないなぁ!!」
ユイさんは軽くため息を吐くと、ドロドロの砂地に軽く手を当てた。すると、砂浜全体が大きく揺れだす。あまりの揺れに少しよろめくが、次の瞬間。砂の中から真っ赤なタコが出て来た。目元には、花びらのようなギザギザがある。
「クラーケン! コイツを始末して!」
ユイさんの合図で、クラーケンはヌルッと加速してアクアサーペントに急接近した。そしてアクアサーペントの角に一本の触手を絡めると、そこを支点に流れるように頭部へ絡みついた。さらに、締め上げられたアクアサーペントの甲殻がミシミシといっている音が聞こえてくる。
「全身出しちゃうと、消耗が速いしあまり正確にコントロールできないからあんまり使えないけどさぁ……アンタを始末する為なら喜んで出すよ!」
耐えかねたアクアサーペントは頭部に集中させた放電を行うと、痺れて離れたクラーケンに向かって水のビームブレスを放つ。すると、クラーケンの触手のうち一本に命中して吹っ飛んでしまった。
「あ……ヤバい……」
ユイさんは、撃ち飛ばされた触手を見て青ざめている
「ユイ、リク君。ワイバーンに乗って。上から様子を見よう」
ボスはスムーズに俺達をワイバーンに誘導すると、全員乗ったのを確認して飛び立った。そして、少し離れた位置からホバリングして様子を見る。しかし、なぜこんな事をする必要があるのか……。
「どうしたんですか? 急にこんな事……」
「アタシのクラーケンは、キレると手がつけられなくなるんだよね……その割に、肉体強度はそこまで無い。まあ、触手一本落とされた程度じゃあまたすぐに生えてくるんだけど……核部まで出すのに許可が必要なのは、この性質の為なの。ほら、見てみな?」
促されるまま下の様子を見てみると、明らかにキレたクラーケンが滅茶苦茶な動きでアクアサーペントに攻撃している。絞めたり叩いたり砂を巻き上げたり体当たりをしたり……滅茶苦茶だ。だが効果はあるようで、アクアサーペントはだんだん押され気味になっていく。
そして不利だと判断したのか、スラム外の海の方へと這って逃げだした。
「……ッ!? マズイ! スラム外の方に行った! 零眼! 今こそアンタの固有術を使う時なんじゃあないの!? このままじゃ、一般人にまで被害が出る!」
「……そうみたいだな」
ボスは、スゥーっと息を吸い込むとそう言った。
次回! ついにボスの固有術が明らかに!?




