BOSS
「ウグァアァァ!!!」
ランスの男はそう叫ぶと、ぐったりと動かなくなった。それを確認したヒロは、刺した銃を横に振ってランスの男の死体を壁に投げ捨てた。
「どうしたリク……そんな顔して」
「そりゃあ……人が死ぬとこなんて初めて見たからな。ていうか、人を殺す現場も初めてみたよ」
「それも覚悟で契約するって言ったんだろ? それに、茜術使って戦ってる時はそういうの気にしなくなるだろ? まあ、脳に負担掛かるからだな多分」
「そうか……そうだな」
確かにそうだ。雷の男と戦っていた時も、殺してしまうかもだなんて気にしたことなかった。そういうものなんだろうか?そう考えていると、ヒロは頭を射撃して殺した男の頭部を銃剣で軽く刺して銃本体を少し上にクイッと上げた。すると、銃全体が複雑に可動してufoキャッチャーのアームのような形になった。やけにメカニカルな見た目の銃だとは思っていたが、変形機構があったのか。
「それでどうするんだ?」
「あー……そっか、知らないか。茜術使いの頭とか心臓とかにはな、片玉魂っていうものが埋まってるんだよ。部位はなぜか個人差アリなんだけど、今回は銃で頭吹っ飛ばした時にチラっと見えたから、俺の作ったコレで取り出す」
「取り出してどうするんだ? 集めるのか?」
「いやいや、そんな事しねえよ。ま、そういう変人も居ないことはないがな。これは取り込むんだ、そしたらその片玉魂の持ち主の茜術……特に固有術が部分的に引き継がれる」
「なんだそれ。あ、さっき死体の回収がどうのこうのって言ってたのはこのためか」
「そうそう。一定時間死体を放置したら勝手に崩れて片玉魂だけ残るから、綺麗に取ることもできるんだけど……待つの面倒くさいからね」
そう言うとヒロは、アームで頭を固定してその中心から伸びる銃剣を操作して片玉魂だけを取り出した。さすがにグロいから、直視はできなかった。
「じゃあ、行こうか。俺達の本拠地に」
「そうだな」
日はもうほとんど落ちていた。俺達は疾うの昔に役目を終えたスラムの街灯の下を歩いた。
「スラム地区に入った瞬間に真っ暗だな……」
「だな……まぁ、慣れればこの暗さも悪くはないぜ?」
「俺もいつかは慣れるかな」
「すぐ慣れる。その前に、契約試験に合格しないといけないがな。そういえば、親とかはいいのか?ギャング組織に入るなんて、普通の地区の人間からすれば恥だろ?」
「いいんだ……親にはもう会えないし、唯一のダチも行方不明。そいつを探すことだけが生き甲斐だよ」
「親は……もしかして俺達の戦争に巻き込まれて……」
「いや、違う。神? とやらがこう…ゴチャゴチャやって並行世界に飛ばしたんだとさ」
「ああ、そういえばそんな情報あったな。しかし、それを信じるのか? どうせレスパリの奴らから聞いたんだろ?」
「普通なら信じないよな……でも、俺に宿ったこの力も現実だし、何より漠然とした現実味があったんだよ。説明はできないけど、なぜか今になって考えると本当の事なんだろうなって気持ちになった」
そんな調子で話しつつ、小高い山を登ると学校のような建物が見えた。
「アレがうちの組織の本部。スラム化で人がいなくなった学校をそのまま使ってる。まず、ボスに挨拶しよう。そんで、明日に契約試験を受ければ良い」
「そうだな。はぁーー疲れたぜ」
俺達は正門から中に入ると、目の前の中央棟に入った。そして備え付けのエレベーターで四階まで上がり正面に見える部屋に入る。
「ここがボスの部屋だ。失礼の無いようにな」
「あぁ…わかった」
“ギィ……”
静かで短い軋みを立てながら重厚なドアが開いた。中には、大きな机とそれを囲むように置かれた椅子。ボスは、部屋の奥の大理石の段でできた低いステージのような場所に置かれた校長の机と椅子らしきものに腰掛けていた。
「十一眼、只今戻りました」
「ご苦労……死体の方は回収が済んだみたいだから片玉魂を取り出しておいてくれ」
(この人がボス……身長は普通だな。体格も……超ムキムキって訳でもない……部屋が暗くて顔が見えないな)
「はい」
「それで、隣の少年は?」
「彼の名前は凛堂坂李玖。路地にて、レスパリ幹部である大蔵に襲われていたところを助けました所、茜術使いであることを知り、志にも問題無しと判断したため契約を推奨。彼がそれに同意したため連れて参りました。術は開花して間もないようですが、それなりの強さも持ち合わせていると感じました」
「なるほど……分かった。明日、契約試験をしよう。まずは二人とも、ゆっくり休んでくれ」
「ありがとうございます。では、失礼致します」
そう言いヒロが頭を下げたのを見て、俺も少し遅れて頭を下げる。ギャング組織のボスだからてっきり高身長のムキムキマッチョマンを想像してたんだが、違ったみたいだ。そういえば、レスパリのボスも小綺麗な女だったな……
「部屋が薄暗くて、ボス顔が見えなかったな」
「うちの組織は、ボスの直営隊の人間と上から三番目までの幹部を除いて誰もボスの名前、顔、年齢、その他色々な情報を知らないぞ」
「そうなのか?」
「ああ。それに、直営隊の人間って言っても一人しかいないからな。知っているのは合計四人だ」
「へえ……」
少々驚いたが、今はもう風呂と飯と寝ることで頭がいっぱいだ。眠い……




