警備再開
ひとしきり悲しみに潰れた所で、俺は改めて気合を入れ直して海沿いの警備に当たる。海沿いは住宅も少ない為かなり少人数での警備が普通だったが、ジェーンの一件もあり今日から二眼のユイさんが加わる事となった。
「リク君、もう復帰して大丈夫なの? 別に超人手不足って訳でもないから、しんどいなら休んだって良いんだよ?」
「ユイさん、お気遣いありがとうございます。ですが、もう大丈夫ですよ。あんまりショボショボしてっと、シンジさんに笑われちゃいますしね!」
「……君は強いね。アタシなんて、初めて親しくしてた仲間が死んじゃった時は三日三晩泣いた後に組織やめようとすらしてたよ」
「そうだったんですね……」
「もう五百五十年くらい前かな? 今となっては、もう顔も曖昧にしか思い出せないけどね……」
「写真とか無いんですか?」
「その子が亡くなった当時は、まだ十契っていう形すら存在してなかったからね……今じゃ考えられないくらい貧相な生活してて、写真を撮れる機器なんて贅沢品で買えなかったよ」
「そう……ですか」
「おっと、暗い話しちゃったね。じゃ、アタシはアッチを警備しとくから、リク君はそっち側をお願いね」
「了解でーす」
再び、約五十年間続けていた生活に戻る。
━━━━━━━━━━━━━━━約一ヶ月後━━━━━━━━━━━━━━━
『梅雨も本格的に始まり、間もなく大雨注意報が各地で発令する事が予想されます……また、道路の冠水が発生する危険性もありますので、車で外出する際はご注意ください……続いてのニュースです━━━━』
飲み屋の半屋外席に置いてあるラジオが、梅雨の開始を伝えた。スラム内ではあまりこういった情報が入手できない為、一時的にスラムの外の昼からやっている飲み屋にてラジオからニュースを聞く。
(もうそろそろ任務の時間かぁ〜……中に水が入ってこないレインコートを支給されてるとはいえ、こんなヤベェ雨の中警備すんの面倒くせえなぁ……)
梅雨真っ盛りの今日、もう既に二日前程から止まない雨が続いている。道路の隅には小さな川のような水流が出来ていて、グレーチングの中にドドドッと勢いよく流れ込んでいく様子は見ていて爽快だった。警察に見つかるとシンプルに逮捕されてしまうので、俺は飯を食い終わるとサッサとスラム側に行って海まで歩いた。
少し海辺を歩いていると、雨で薄暗く揺れている不気味な水面から急に水のビームが飛んで来た。ギリギリ着弾せず、俺の足元右前へ当たった。
(……!? なんだ! レスパリか!?)
咄嗟に刀を抜いて水面を睨む。すると、また水中からビームが飛んで来た。今度は、しっかりと見切って避ける。
(人……では無いっぽいな。一体何だ? 守護獣か?)
「おーい! リク君! どうしたのー?」
ふと声がしたので振り返ると、ユイさんが様子を見に来ていた。
「危ないです! 近寄っちゃあダメだ!」
俺が大声を上げた瞬間。水中からユイさんの方へ向かってビームが飛んだ。間違いなくこのまま進めば当たってしまう。
(ヤバいッ!)
そう思って、咄嗟にユイさんの方へ走るがその必要は無かったようだ。ユイさんが半歩後ろへ下がると、その背後からタコの触手のようなものが出てきて、ビームを受け止めた。
「ごめんね〜、なんだかんだでリク君にはアタシの固有術教えてなかったよね。アタシの固有術……つまり守護獣は、『クラー・クラーケン』こういう相手にはぴったりだよ」
「え……ユイさんはこの水中に居るやつを知っているんですか!?」
「そうだね。この攻撃方法は間違いなく……うちのデータベースに保存されている放浪種……つまりは持ち主が死亡した自律型の守護獣だ。名前は確か……『アクアサーペント』」
ユイさんが、今までに見たことが無いような固い顔をしている。
「アタシと、この前話していた亡くなった子……アタシ達二人が仕留め損なった奴だ」
ユイさんの言葉に反応するかの様に、アクアサーペントは痺れを切らして水中から姿を現した。
(デっ……デカい……三十メートルはあるぞ。色々と強そうにゴテゴテくっついたウミヘビみたいだな)
アクアサーペントの縦長の瞳孔が俺達を捉えた。
「さあリク君! 気を引き締めていくよ!!」




