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邂逅

 宴は滞り無く、特に大きな揉め事も起きずに終わった。時刻は深夜十一時、俺とシンジさんは明日の業務もあるので早々に帰る事となった。何度もお礼を言われた後、俺達は真っ暗な深層スラムを歩き出した。ポツポツと雨が降り始めている。

「いや〜楽しかったなぁ」

「そうですね、ていうか標的の男嫌われすぎてて笑いました」

「そりゃあ、処刑任務の対象になるには結構な数の依頼が出ないとダメだからな」

「そうだったんですか」

 俺達は川に降りて桟橋に立った。しばらく待っていると、船がやって来た。行きと同じ人なようで、軽く手を挙げて挨拶してくれた。俺達はサッと乗り込んで座り、一息吐いた。

「お客さん……任務は終わったのかい?」

「あぁ、おかげ様で」

「そうかい、良かったなぁ……横のお客さんも、久しぶりだねえ」

「え、あぁ……覚えててくれたんですね」

「そりゃあ覚えているさ。こんな底辺の俺にも丁寧に接してくれた……忘れはしない」

「そうですか、それは良かっ━━」

 シンジさんが言い終わる前に、俺達の船に誰かが飛び乗った。衝撃で船が激しく揺れる。

「うおぉッ!?」

 俺がそう言った瞬間に、見慣れたギザギザの触手が俺に飛んで来た。降りてきたのは、ジェーンだ。

(マズイマズイ……今来られるのはマズイぜッ!! コイツとシンジさんを会わせる訳にはいかねえってのに……!)

 俺は触手を真正面からMDSで受けて、眼前に立つジェーンを船から突き飛ばした。しかし、ウミユリ海底譚が触手を伸ばして投げ出されたジェーンを掴んだ。そして、そっと着水しながらカサの部分の上にジェーンを置いた。

「リク……だったっけ? 私は昨日のリベンジをしに来た」

 ジェーンがそう言うと、水中から何本も触手が俺に飛んで来た。盲目のため、何本かは外れたがそれでも危険な事に変わりはない。

「船頭さん! すまない!」

 シンジさんはそう言うと、船頭の男を川へ突き飛ばした。巻き込まないための合理的な判断だ。どうやら、シンジさんはまだ眼前の相手が自分の母親である事に気づいていないようだ。顔立ちがどことなく似ているため、二人が真の血縁である事に間違いはないだろう。だからこそ、気づかせる前に逃げるか始末しないと……

「……二人、いるわね。さっき川に落ちたのは船頭かしら……ま、いいか」

(喋るな喋るなッ! 声でシンジさんが気づいたらどうすんだッ!!)

「うおおーーッ!!!!」

 俺は誤魔化すように大声を出してジェーンへと銃を撃った。しかし、銃のように大きな音が出る武器は全て感知されてしまい、触手で叩き落とされた。

「リク君! そこの桟橋に飛び移るよ!」

 シンジさんが指さす先には、今はもう使われていないであろう桟橋があった。これはラッキーだ。本降りになり始めた雨に、襲撃にあったボロボロのこの船が耐えられるはずもない。水中じゃクラゲ型の守護獣(ガーディアン)なんかに勝てないだろうし、一旦安定した地面に行かなければ。

 俺達は桟橋へと飛び移ると、急いで上に上がった。まだ組織の拠点からは遠く、深層スラムの中なので巡回している幹部が助けに来てくれるとも思えない……

「誰なんでしょうか一体……リク君、名前を覚えられていたようですが何か知りませんか?」

「……さぁ?」

 俺は不自然にそう返事する事しかできない。すると、川からウミユリ海底譚に乗ったジェーンがヌルリと現れた。幸い、深層スラムがほぼ真っ暗なおかげでジェーンの顔はよく見えない。なんとか乗り切れそうだ……

 俺達は身構えて、あっちから攻撃して来るのを待った。すると、ウミユリ海底譚とジェーンは珍しく別行動を取り、面倒な事にシンジさんの方にジェーンが向かった。

「シンジさ━━」

 俺がそこまで言った所で、ウミユリ海底譚が触手を伸ばして来た。俺はしょうがなくそれをナイフで受け流して、伸び切った触手を切りつけた。だが、ゴムのように伸縮するせいで上手く刃が通らない。そのまま別の触手に腹を突かれてしまった。そしてウミユリのようなギザギザに掴まれ、持ち上げられてしまった。

(こりゃヤバい……本体が居なくても相当強いぞコイツッ!!)

 俺はそのままブン投げられて、廃墟ビルの3階の割れた窓にスッポリ入ってしまった。あまりにも遠くに投げられてしまったせいか、それ以降ウミユリ海底譚が追ってくる事は無かった。俺は焦って廃ビルの階段を駆け下りる

(ヤベェよヤベェよ……色々どうしよう。まずシンジさんに、ジェーンが母親である事を悟られないようにしないといけない。あとは……いや、とりあえず今は向かわないと)

 必死に走って着くと、普通サイズの刀を持っているジェーンがシンジさんを翻弄して切り続けていた。

(なんでだ……? シンジさんの術に初見で対応するなんてほぼ不可能だろ……どうなって━━は!?)

 俺はある一つの重大な事に気がついた。

(もしかして……盲目には効き目が無いのか!?)

 俺はさらに全力で走ってシンジさんの方へ向かう。だが、それを留めるようにウミユリ海底譚が邪魔をした。

「クッソ……テメェなんで俺の術が効かねえんだぁ!?」

 もはやシンジさんがキレ口調になっていう事さえも気にならない程にマズイ状況となった。

第一部のキャラは、ごく一部を除いて全部適当にノリで作ってたんで愛情もクソも無かったんですが、今になって色々と情が移ってきたような気がします。

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