ウミユリ海底譚②
「お前……レスパリの人間か!!」
「あんな胡散臭い組織になんて入るわけないでしょう。ただ、貴方の味方ではない事だけは確かね。『ジェーン』それが私の通り名」
(ジェーン……!? じゃあコイツがシンジさんの母ちゃんか……!? にしてはかなり若い……いや、茜術身に付けて歳を取らなくなったのか。二十代前半くらいに見えるぜ)
「話はオシマイ」
ジェーンはそう言うと、ウミユリ海底譚を操って攻撃してきた。俺は全力で走って出口まで行き、転がるように外へ出た。すると、ジェーンもゆっくりと歩きながら出てくる。やはり、ジェーンの目は黒目の部分が真っ白になっている。そして、俺が目の前に居るのにも関わらず走って向かってくる事も攻撃してくる事も無い。どうやら、目が見えていないようだ
「アンタ……盲目なのか?」
俺がそう言った瞬間、ウミユリ海底譚の触手が俺の頭に向かって飛んできた。これも回避するが、変わらず俺に向かって触手が次々と飛んできた。速すぎて、回避するのがやっとだ。クラゲなのにどうしてウミユリなのかと思ったら、触手の先端がウミユリのようにギザギザになっているようだ。晴れた空の下でも、触手や傘のネオンのような鮮やかな発光色彩が輝いている。
(盲目ってのはアタリみたいだな……音で感知してるのか?)
俺はなるべく音を立てないように刀を抜いてゆっくりと近づいた。すると、数メートル付近まで一切感知されなかった。だが、もう少しで刀が届くという距離で触手が飛んできた。ノーモーションで高速の突き……当然避けられる訳もなく、MDSのおかげで致命傷にならずに済んだがそれでもかなりの衝撃があった。さらに、追撃が飛んでくる。刀を回すように振ってなんとか耐えるが、やはり限界はある。相手の触手は数え切れない程生えているが……攻撃に使えるのは十本程のようだ。しかし、呼吸する暇も無く打ち込まれる十の攻撃にはさすがに耐えられない。俺はバックステップで離脱して、すぐ横にあるショッピングモール内へと駆け込んだ。
(はぁ……一体何だったんだアイツは……目が見えないんだろうけど、それにしては攻撃が正確すぎる。音で感知するにしても限界があるはずだ。あ、もしかしてあの触手か!? 確か、数本の触手が地面に触れていた。あれで地面に響く音を探知してるのか)
電気が通っておらず、外からの光だけが頼りとなっているショッピングモール内で、俺は適当に歩いていた。すると、正面入口の吹き抜けの天井に付いている採光窓がパリンと割れる音が聞こえた。そして上を見てみると、ジェーンがウミユリ海底譚の触手に座るようにして降りてきていた。
(……!! まずい。ここ数十年で分かった事だが、俺は守護獣使いとは相性が悪い。しかも、相手は少なくとも俺よりかなり経験を積んだ相手だ……誰か助けを呼ぶか?? いや、物音を出せないからそれは厳しいな……俺一人で倒すか逃げ延びるしかない……)
ジェーンは正面入口に入ってすぐの場所へ降り立つと、黙って靴の踵部分をコツコツと何回か床で軽く鳴らした。すると、床に散乱した物や一部崩れた装飾等を見事に避けてこちらに歩いてきた。まるで目が見えているみたいだ。
そして、一定の距離近づくと再び踵を鳴らした。その瞬間、迷いなく俺の方へウミユリ付きの触手が飛んできた。なんとなく予想はしていたので刀で弾くと、また追撃のラッシュが飛んできた。
(埒が明かねえ! 一か八かブッ放すか!)
俺は斬撃エネルギーが溜まり威力の上がった刀で、横の柱を思い切り叩き斬った。すると、ガラガラと音を立てて建物の一部が崩れた。その隙に俺は全力で走って逃げた。そして、従業員用の通路のような場所に入り込んで階段を駆け上がった。
(屋上まで行けば……ッ!!)
無事に屋上まで出ると、背後の地面がガリガリっと削られてその穴からジェーンが出てきた。
「どこに逃げようと……私の守護獣は振動や音を感知してどこまでも追う。盲目なんて大した問題じゃないわ。さあ、そろそろ覚悟を決めて」
(さて……ここからは賭けだ)
俺は大きく息を吸い込んで、叫んだ
「ショウタさーーーーんッ!!!! 助けてぇーーー!!」
静かな海沿いの場所に、俺の叫び声がよく響いた。すると、遠くの方でオウルベルドの鳴き声が聞こえた。
「よしッ! 気づいてくれた! 後は……」
俺はジェーンの方へ向き直った。奴は苦々しい顔をして俺を見ている
「やってくれたねぇ……姿を見られたからには、もうここには居られない。ここから二人を相手にするのも分が悪い……」
ジェーンはそう言って、さっき空けた穴の中にウミユリ海底譚と共に飛び込んでいった。どうにか助かったようだ……遠くの空に、飛んでくる一羽の大きなフクロウが見える。
テスト期間なんで、毎日一話っていうのが難しくなっています……ッ!
どうかご容赦を!
ウミユリ海底譚っていちいち書くとテンポ悪くなるなぁ……




