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開戦の兆し

 何となしに日々を過ごしていると、ヒロに声を掛けられた。

「リク、今日の正午から全体会議が始まるから気ぃつけろよー」

「会議? そりゃまたどうして……」

「なんでも、諜報部……十眼からの重大な報告があったそうだ」

「へえ、でもさ。十眼って正直信用できなくないか?」

「……あんまりそういう事を大声で言わない方が良いぜ。ただでさえ、お前は十眼に恨みを買ってるんだからなぁ」

「あれ、俺何かしたっけ?」

「覚えてねえのか? 数十年前に、アイツの直属の部下を闘技大会で殺したろ?」

「あー……そうだったな。ま、幹部にはなれなかったがよ」

「曲がりなりにもアイツは百年以上俺達の組織に居る契約者だ。だから、ボスには逆らわないと思うぜ?」

「そうか……ま、とりあえず正午な。場所は?」

「闘技場だ」

「了解」

 時計を見るともう正午が近いので、俺は適当に食事を済ませると闘技場に向かった。到着すると既にそれなりの人数が集まっていて、ざわざわとしている。闘技大会の開催発表の時とは違い、一眼隊から十一眼隊まで全員揃っているようだ。幹部全員が揃っている様は壮観だ。幹部全員、独特なオーラを纏っているように見える。

 闘技大会の後ヒロから聞いた事には、三眼隊以上の契約者はそれ未満よりも実力が数段上のため、七眼の幹部選別闘技大会には最初から呼ばれなかったそうだ。

 そして、しばらくすると観客席の方にボスとマイカさんが現れた。ボスは相変わらず、顔を隠している。

「皆、お疲れ様! 今回は重大な発表がある!」

 ボスがそう言った瞬間、その場が一気に静まり返った。

「重大な発表というのは、二つある! どちらも、良い報告とは言えない! だが重要な事だ!」

 再び闘技場がざわついた。色んな憶測が飛び交うが……一体どんな発表なんだろうか。

「一つは、五十年前に存在が判明した『ダン・レストレード製作所』と『高潔の紅華レッドスパイダーリリー』が、また怪しい動きをしているという事だ! 製作所の方は、レスパリから資金援助を受けて勢力を拡大している! そして二つ目は! 近々、再び五十年前と同じような争いが起きる可能性が高いという事だ! そうなれば、皆に強いる負担も大きくなるだろう! 特に幹部の皆は、命を落としてしまうかもしれない! だから、覚悟を持っておいてほしい! 俺のために命を捧げろとは言わない! だが、いざその時が来た時に後悔が残らないようにしてほしいんだ!」

 ざわざわは、どんどんと声量を増してうるさくなる。俺としても、かなり衝撃的な内容だ。あの時は、本当に死にそうになったが……またアレがあるのか……

「根拠は、十眼隊の潜入捜査によって得た情報だ! そして、この後に要注意人物。つまり、うちのシマで顔を見たらすぐに報告してもらいたい人物の顔を各隊長からお知らせしてもらうから、皆よく覚えるように! 以上だ! 質問がある者はいるか!!」

 そこでまた、一気に静かになった。皆、あまりの衝撃に質問どころではない。ここ五十年間で入ってきた新入りなんかは特に、気が気ではないだろう。俺は徐々に解散しだす人の波に身を任せて、闘技場を出た。そして、出た所でシンタロウと少し話す。

「また……始まるのかな」

「そうだな。俺の恩人を殺しやがった野郎共に復讐できる大チャンスだ」

「あ……キザミとバジリスク以外にも、あの人の死に関わってた事知ってたんだな……」

「そりゃあ勿論。工場地帯でまとめて復讐できなかったのが少し残念だが……まだそんな実力は備わってなかったからな。その時じゃなかったんだろう」

「そういや、初めて俺とシンタロウが会った時なんで固有術使わなかったんだ?」

「あぁ、あれはシンプルに茜力がギリギリだったから使えなかったんだよ」

「へぇー」

 そんな事を話しながら歩くうちに、俺達は訓練場まで来ていた。もうすぐ戦争が始まるとなれば、やることは一つ。訓練だ。俺達は二人とも武器を持てばそれなりに戦えるが、それが使えなくなった途端に弱くなってしまう。俺は幹部選別闘技大会で少し慣れたが、まだまだ足りない。

「いいね、二人とも……すぐに訓練とは感心だよ」

 いつの間にか、すぐ近くにボスが立っていた。依然、顔は隠れている。

「「……ボスッ!!??」」

「おいおい、そんなに驚かないでよ。俺だって組織の人間なんだぜ? 皆の頑張りを見ておきたいんだ。これが最後になるかもだしな」

(しれっと怖い事言わないでくれよ……)

「リクは友人探し。シンタロウは復讐が原動力かな?」

「そうですね」

「やる気があるのはとても良いことだよ。こっちとしても助かる。ただ、それに突っ走りすぎないように気をつけてね」

「……というと?」

「戦いが終わった後に、それが原因でできた瓦礫に潰された無関係の子供を見た事はあるかな? 仲間を自分に着いて来させたが故に敵に掴まってしまい、見つけた頃には首と胴体が生きたまま切り離された死体になっていた事は……? 無いよな。当然、無い方が良い事だ。俺は全部見てきた。だから、二人にはそうなってほしくないんだ」

 ボスの顔は全く見えないが、どうにも悲しそうな顔をしているように見えた。ボスはずっと遠い存在だと思っていたが、案外人間らしい部分もあるのかもしれないな。

昨日サボってすみません!

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