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ダン・レストレード

「リクは後ろの奴らを頼む! 大将首は念の為に俺がやる!!」

 ヒロはそう言うと、ジャックに飛びかかった。俺は刀を抜いて一番前に出張って来ている下っ端サイボーグに斬り掛かる。しかし、金属製の腕でガードされてしまい切り落とせない。さらに反撃を食らいそうになるが、俺はバックステップで回避して、がら空きになった腹部を深々と切った。すると、MDSに当たる感触も無くスルッと刃が通る。MDSも改造されて固くなってるのかと思っていたが、随分と拍子抜けだ。

(コイツら……MDSを張ってない!? いや、そもそも基礎的な汎用属性も使ってない。もしかして術者じゃないのか?? まあ、関係ない。俺達の行く手を阻む奴らはとりあえず斬る!)

 最初の奴はあっさりと倒れた。そして流れるように次へ斬りかかろうとしたが、後ろから何か硬い物で頭部を殴りつけられる感覚があった。グラグラする視界を動かして見ると、両足が義足となっているサイボーグが立っていた。

(コイツから倒すか!)

 俺は刀を斜め下から振り上げるように切った。当然、相手は片足を上げて防御する。そして、立っている方の足で飛び上がると空中で回し蹴りを放ってきた。だが、想定内。

 俺は、頭に飛んでくる足を掴むとプロレス技のように後ろへ叩きつけた。だが、義足は全く壊れる気配がない。とても頑丈なようだ。

「ちょっとちょっと……何やってんの? ジャック」

 コンテナの上から大人な女性の声が聞こえる。見てみると、ラフな格好をしてキャップを被っている長髪の女性が古びたコンテナの上に座っている。

「……レストレードさんッ!!? なぜここに!?」

「いや……アンタが無理言って戦うって拠点出ていったからこっそり様子見に来たんだけどさぁ…………その左手のブラスター、あんまり連発するなって言ったよね? アタシもうオーバーヒートした砲身を直すの嫌なんだけど」

「すみません……気をつけます」

「ん、じゃアタシはここで見てるから頑張ってねー」

「はい!」

(あの女がコイツらを改造したのか……? まあ戦いに参加しないなら一旦無視するか……)

 俺は、残りのサイボーグに刃を向ける。どうやら、コイツらは全員術者ではないみたいだ。それに、目の前で何人も殺されてるのに一切動じていない。だが、覇気も感じない。死体が動いてるみたいだ。恐れずに突っ込んでくるんで、どうにもやりづらい。

 すると、少し後ろに立っている奴が円筒状になっている腕をこっちに向けてきた。

(……飛び道具か!? 避けないと)

 俺が焦って倒れ込むように伏せた直後、頭上を太い光線が通り抜けた。外れた光線は、奥にある何かのタンクに丸い風穴を空けた。

(おいおい威力高すぎるだろ……どうなってんねん)

 そう思って光線のサイボーグを見ると、砲身があった方の半身が完全に粉々になって自滅していた。

「ありゃりゃ……やっぱり無茶な威力にさせすぎたかな?」

 いつの間にかレストレードが近くに立っている。

(……!!? コイツ……戦わないんじゃなかったのか!?)

「アンタ達にまで破裂されちゃ困るし……もう下がっていいよ。コイツはアタシが片付ける」

 レストレードのその一言でサイボーグ達は引き下がった。

「自己紹介が遅れたね。アタシは、『アマシロ・レストレード製作所』の社長の、ダン・レストレード。前は警官やってたんだけど、なんか色々嫌になって今はレスパリに肩入れしてる」

「俺は十契の下っ端、リクだ」

「リク君……残念だけど、君はここで殺す。ご自慢の固有術も汎用属性も使えないよ」

「は? 何言って…………あれ?」

 試しに廻翠刃(かいすいじん)を出そうとしたが、いつもならサッと出せるのに今は全く出る気配がない。

「アタシの固有術は、相手から茜術を奪い取ってフラットな状態に戻す。『平穏(シャンティ)』それが術の名前だよ。基礎的な茜力操作での身体強化は使えるけど……それだけじゃ汎用属性も使えるアタシには勝てない」

「……ッ」

 俺は刀を構えて、眼前の相手に集中する。眩しい三日月の明かりに照らされた工場地帯に、雨が降り始めた。

(天気雨……夜なのに珍しいな)

 その瞬間、俺の頭上に大きな影が通った。上を見てみると、さっき俺をここまで運んだワイバーンが戻ってきており、上空を旋回しながら俺達の様子を伺っていた。

(そうか……ッ! 天気雨は、ボスが活動できる天候! 助けに来てくれたんだ!)

 俺は安心して、レストレードの突っ込んだ。強力な踏み込みから振り下ろされる刀は、奴の右頬を薄く切る。MDSが張られているため大したダメージではないが、上でボスの守護獣(ガーディアン)が見守ってくれているという安心感が、俺の踏み込みをより力強くする。

 レストレードは両手に雷を纏わせて伸ばしきられた刀を掴むと、強い電流を流し込んできた。

(やっべぇ……コレメッチャ効く……コイツのこと舐めすぎてたぜ……)

 俺は急いで刀から手を離そうとするが、電流によって筋肉が伸縮してしまいできない。しかし、意識が落ちかけた寸前……俺の体に自由が戻った。

「ぐっ……!!」

 レストレードは、上空から急降下してきたワイバーンに押さえつけられていた。全長六メートル程度で細身な竜だが、それなりの体重はあるようでレストレードは苦しそうだ。

 さらに、ワイバーンは空色の炎を口の中からレストレードに向けて一発放った。ガードができなかった分、かなり効いているようだ。二発目も入るかと思ったが、レストレードは雨によってできた水たまりに電流を流して、自分ごとワイバーンを感電させて脱出した。

「はぁ……はぁ……この特徴的な色の汎用属性は、零眼の……クソ、なんでこのタイミングで」

「……これで形成逆転だな。レストレード」

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