死獅の瞳、熱異常、対するは②
(この『衰鱗鳥』という守護獣……どうにも不気味だ。一見病弱な老鳥のようにも見えるが……一歩間合いを詰めれば嘴で穴まみれにされそうな圧倒的威圧感がある)
「リク君、下がっていて。コイツは強い」
「そうみたいだな……リク君、下がっていな。ここは僕達で片付ける」
クリスさんはそう言うと先程まで使っていた鉄球を仕舞って、片方は錆びた鉄球。もう片方は何かよく分からない光沢のある金属の球がついたアメリカンクラッカーを取り出した。
コウさんは、腰に付けていたデカいナイフを取り出した。
「コイツを使うのも久しぶりかな」
そう言うとクリスさんは、アメリカンクラッカーを高速でカチカチと動かして大量の溶熱スラグを生み出して操った。シンタロウの弾丸のような軌道で衰鱗鳥まで進むも、ヒットする直前で衰鱗鳥は羽を大きく広げ腹をこちらに向けて、徐々に透明のグラデーションが掛かるように透けて見えなくなった。
すると飛行する溶熱スラグは、最初からそこに何も無かったかのように、直前まで衰鱗鳥が立っていた位置を通り抜けた。
「……当たらないッ!?」
すると次の瞬間、先程と同じ位置に衰鱗鳥が現れて片翼をバサッと仰ぐように動かして羽根を二本飛ばした。だがその羽根は俺にもクリスさんにも当たることは無く、コウさんが恐ろしいスピードで切り落とした。
「どういう仕掛けかは分からんが……とりあえずは攻めよう。クリス」
「了解いたしやしたぁ!」
その言葉で二人は衰鱗鳥へと走り出した。衰鱗鳥は広い倉庫内を飛び回りながら、羽根を飛ばしだした。しかし、クリスさんはアメリカンクラッカーで。コウさんはナイフで防御していて、消耗戦でどちらが勝つかは一目瞭然だ。衰鱗鳥とそれを操る術者もそれを察したのか、降りながら透明化した。
「……またか」
二人は立ち止まって周囲を見回した。だが、衰鱗鳥は姿を現さない。俺も念の為に刀を構えて備える。すると、見回している二人の頭上に浮かぶ鳥の足が見えた。
「二人ともッ!! 後ろです!!!」
俺がそう言うも遅く、クリスさんは方をガッシリ掴まれて持ち上げられた。その瞬間、コウさんのナイフが残像を残す速さで振られて、クリスさんを掴む衰鱗鳥の足を軽く切った。
(恐ろしく的確で、寸分の迷いも感じられない。コレが一眼の強さか……)
すると、ギィーーッ!! という声が聞こえてクリスさんが地面から落ちた。衰鱗鳥は、攻撃がなぜか当たりづらいが、いざヒットすると脆いのかもしれないな。
「いってぇ……」
「クリス。大丈夫か?」
「いや、まずいかもしれませんねぇ……傷口が黒っぽくなって血管も浮き出てます。もしかしたら毒かもしれません」
「そうか……」
「あ、そうだ」
クリスさんは、ふとアメリカンクラッカーを傷口に近づけると、カチカチと鳴らして溶熱スラグを傷口に飛ばした。
「あっっっっっちぃーーー……」
「何やってんだクリス……??」
「傷口の消毒ですよ……この程度の怪我なら医療班に治してもらえます。毒が全身に回るほうが危険でしょう」
「……イカれてんなぁ」
「褒め言葉っすねぇ」
(……なんか……大丈夫そうだな)
すると、天井付近の壁が轟音と共に大きく凹んだ。見えない何かに突かれたように見える。どうやら衰鱗鳥は、勝ち目が無いと判断したのか壁を突き破って逃げようとしているようだ。
「逃がすかッ」
クリスさんは溶熱スラグを大量に作り出すと、それを凹んだ場所付近に飛ばした。しかしやはり、当たっていないようで、溶熱スラグは全て壁にヒットした。
「助かった。おかげで壁を何度も突付く手間が省けたよ」
その声が響いた瞬間に、衰鱗鳥は再び姿を現すとドリルのようにツイストしながら赤熱して溶解寸前の壁へ飛行し激突した。すると、壁は紙のように破れて穴が空いた。
「……待てッ!」
「いや、追わないでくれクリス」
「なぜです!」
「罠かもしれない。それに、ここ周辺の敵はアイツだけみたいだ。相手の術がどういったものか解明できないうちは下手に突っ込まない方がいい」
「……分かりました」
俺は一安心して刀を収める。そして、二人に近づいて話しかけた。
「あの……次はどこに向かいますか?」
「そうだな〜……どうします? コウさん」
「とりあえずヒロの所に行こう。心配だ」
「そうですねー」
俺達は歩いて倉庫を出ると、コウさんが指笛を鳴らした。遠くまで響いて倉庫の間を何度も反響する。すると、空から先程俺達を運んだボスのワイバーンが飛んできた。
「じゃ、これに乗って行こうか」
コウさんがそう言いかけた時、地響きが起きる。以前にも感じた事のある特徴的な振動
(まさか……またアイツか??)
すると、倉庫をブチ破って巨大なヘビが現れた。それは紛れもなく、俺が何度も見た守護獣……『バジリスク』だ。俺達を見るなり、バジリスクは姿勢を低くして前肢を地面にガッシリと着いて威嚇した。
「リク君。君には危険すぎる相手だ。一度は生き残れても、二度目は無いかもしれない。君はこのワイバーンに乗ってヒロの所まで行くんだ」
「……でも」
「リク君〜、ここは先輩の俺達に任せてくれよ、な?」
「……分かりました」
俺は渋々承諾すると、ワイバーンに乗って飛行を開始した。しばらく飛んでから背後を見ると、二人がバジリスクと交戦しているのがよく見えた。
(どうか死なないでくれよぉ……)




