死獅の瞳、熱異常、対するは①
俺達は工業地帯跡に到着すると、シンジさんから現状を軽く伝えられた。今回駆けつけた幹部は、十一、七、四、一眼の計四人だそうだ。ヒロは俺達が降り立った場所よりも少し離れた位置にいるようだが、一眼と四眼は近くで動いているみたいだ。よって、戦力分散のためにシンタロウは少し離れた場所に移動する事となった。さらに、シンジさんは固有術の関係で割と戦闘が激しい場所に派遣されるため別行動。まだ敵が発見されていないここで、潜んでいる敵がいないか確認するのが俺の役目だそうだ。俺だけ取り残して、ワイバーンは飛んでいってしまった。
(残った敵がいないか確認しろって言われてもさあ……俺一人かよ)
俺は暗い工業地帯跡を歩き出した。何が入っていたのかも分からないでっかいタンクや、地面を走る無数のパイプ……その上を橋のように掛けられている隙間のあるフェンスがついた金網の足場をゆっくりと歩きつつ、物陰に潜む者が居ないかを確認。だが、特に妙な気配も感じないし……先に来た人達が殲滅していったのか?? 所々に血痕や大きく凹んだ場所があるが。
そう思ってどんどん歩いていくと、急に背後から首に刃物が突き立てられた。
「振り返れば殺す。質問に答えろ。お前は十契か? レスパリか?」
(……何だ!!? 全く気配がしなかった……誰だ?)
「お……俺は十契だ!」
俺はそう言い放った瞬間に、背後の男の顔面に向けて全力で後頭部を打ち付けるように頭を振った。ゴッという音がしたが、恐らく寸での所で腕を間に挟まれたな……
「待て、落ち着いてくれ。俺も十契だよ」
「……へ?」
「というかその姿……もしかして、幹部選別闘技大会で決勝まで勝ち進んだ奴か? 確か名前は……」
「リクだ」
「そう、リク君だったね。すまない、まだ新入りの見た目と気配を覚えきれていなくてね。もう歳かな」
「そういうアンタは誰だ?」
「……申し遅れたな。俺は十一眼の契約者、一眼。村上 皇だ。」
「え……一眼??」
「あぁ。ま、はじめましてだから知らなくてもしょうがない」
「あぁ……それはどうもすみません。御無礼を」
「良いんだ。それより、近くに敵はいたか?」
「いいえ、特に見受けられませんでした。血痕とかはあったんですが」
「そりゃあ、もう一人の幹部と一緒にここらの敵を殲滅したからな。ただ、隠れてて逃れようとしてる奴がいるかと思って戻ってきたんだ」
「そうだったんですね。ちなみに、もう一人っていうのは?」
俺がそこまで言った所で、少し離れた場所のタンクが爆発した。そして、吹っ飛ばされた死体が俺達の前に転がってきた。爆発して炎上するタンクの奥に、少年が一人立っていた。
「もう一人は、彼。四眼のクリス・レウスだ」
「こりゃまた派手ですねぇ……」
ここまで歩いてきた少年は、片目が縫い付けられて閉じられていた。
「コウさん。これで周辺の敵は全滅のようです」
「そうか、お疲れ様」
「して……彼は?」
「この子は例の新入りだよ」
「あぁ、この子が……」
“子”と呼ばれる事に違和感があるが……この人も俺よりかなり年上なんだろうな。マイカさんの例もあるし。ヒロが言うには、幼少期から茜術が開花した人は不老の作用が関係して成長がかなり遅く進むみたいだ。マイカさんは、あの見た目でも数百歳だとか……
「リクと申します。よろしくお願いします!」
「うん、元気が良いね。じゃ、アッチの倉庫地帯も行ってみるか。あそこはノータッチだから敵が潜んでるかもしれない」
「分かりました」
「俺も付いていこう」
「ありがとうございます、コウさん」
そうして俺達は倉庫地帯に到着し、一番大きな倉庫へと入った。中には何も無く、とても静かだ。
「誰もいませんね……」
「いや、油断しちゃいけないよリク君。」
クリスさんはそう言うと、ポケットから錆びた鉄球を取り出した。そしてそれを軽く手で包むように持つと、真っ赤な火花のようなものが手の隙間から吹き出して倉庫内の死角となる部分にカーブを描いて飛んでいった。だが、何も起きない。
「ハズレみたいですね。じゃ、隣の倉庫に向かいましょう」
「……今のは?」
「これが僕の固有術、『熱異常』だよ。錆びた鉄さえあれば、僕の固有術でテルミット反応を引き起こして超高熱の溶熱スラグを生み出して操れる。まあ、僕の固有術もコウさんの前じゃ無意味だけどね」
「コウさんの固有術って……そんなに凄いんですか?」
「まあな、『死獅の瞳』という名前だ。それ以外を明かすことはできないが。俺の固有術のおかげで、俺は一眼まで上り詰めることができた。零眼……つまりはボスから、あまり自分の固有術に関して喋らない方が良いと言われたんでね」
俺達が倉庫を出ようとした瞬間。数メートル先にある倉庫のシャッター扉が急に落ちた。直後に、俺達と扉の間にさっきまで見えなかった何かが姿を現す。それは、オオトカゲと鳥を足してゴツくしたような外見をしている。どうやら、鱗と羽の向きによって姿が見えたり見えなくなったするようだ。さらに、背中に誰かが乗っている。
「十契の人間か……私の守護獣である『衰鱗鳥』の糧としてやりましょう」
「……レスパリか」
コウさんはそう言って腰のナイフを抜いた。
「正確には違いますが……まあ、そんな所です」
(おいおい、なんか強そうじゃあないの? コイツゥ……)
なぜ俺はこうも争いに巻き込まれやすいのか…………
ついに第一部も折り返し地点となりました!
ここまでリアタイしてくださった方、本当にありがとうございます!
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