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幹部選別闘技大会⑧

 俺は息を整えてシンタロウを見つめる。すると、背後から何かが擦れる音が聞こえた。焦って振り返ると、観客席とのバリアに当たって落下している数十発の弾丸が回転していた。あまりに速すぎて、床を空回りしているようだ。俺は急いでその場を飛び退くと、さっきまで俺が立っていた位置にカーブを描きながら落ちていた弾丸が飛んできた。さらに、外れた弾丸は回転を続けて転がっていき円形の闘技場の壁をカジノのルーレットのように回りだした。しかも、時計回りをしている物も反時計回りをしている物もあり全てを目で追うことができない。

(ヤバい……シンタロウを警戒するのに加えて、壁を回ってる弾丸にも注意しないといけないのか……濫線廻廊(らんせんかいろう)を全方位に展開するのは無理だし、廻翠刃(かいすいじん)を飛ばして防御するのも難しい……俺の汎用属性とその術のレパートリーなんてほとんどない。)

 あれこれと考えていると、シンタロウが一発を俺に撃ってきた。刀で球を切り落として止めたが、斬りきれなかった数発は壁に当たると回転し始めて、壁を高速で駆け抜ける。そして数発が大きく軌道を変えて四方八方から俺に向かって飛んでくる。濫線廻廊(らんせんかいろう)でいくつかの弾を防ぐが、後ろに意識が行き過ぎて五発程を食らってしまった。

(いってぇ……撃たれるってこんな感覚なのか。しかも、術の力が乗った弾だからMDSの茜力がゴリゴリ削られていく…………こうなれば、接近戦で勝負するか)

 俺はダッシュで数メートル離れてるシンタロウへ走る。だが、シンタロウは近づけまいと二発連射して壁を走る弾を十発程度飛ばした。俺はMDSの硬化に全茜力を注いで耐え抜いたが、それでもかなりの痛みと疲労が伴う。そして、なんとか距離を詰めて斬りかかる。しかし、シンタロウは冷静に振り下ろされる俺の刀に手を添えた。すると、俺の刀は急に手の内で回転し始めて俺自信を切った。

(……!? なんだ……刀が急に…………)

「お前の刀に触れて回転エネルギーを付与した。手の内の刀を手元を支点にして回すことで、切らせたんだよ。」

 俺は焦って一歩身を引いた。だが、それが良くなかった。シンタロウは、それを待ち構えていたように俺の額へショットガンの銃口を当てると、そのまま撃った。ゼロ距離の射撃には対応できず、俺の額に強い衝撃が走った。

「俺はずっとこの時を待っていた。自分が世話になった人が亡くなったのはすげぇ不本意だったがよ……必ず幹部になってやろうって思ってたんだよ。そのために、固有術の効果範囲を広げたり色々と鍛えたんだ。薬漬けで荒んだ生活から俺を救い出してくれたボスに報いるために! 俺はお前を殺してでも勝てやるぜ! リクゥ!!」

(すごい覚悟だ……やっぱり命が絡む事で覚悟を持った奴は一味違うんだな。だが!)

 俺は限りなく予備動作を消して最速で溜めた分の斬撃を放った。シンタロウは壁を走る弾丸を間に挟んで止めようとしたが、俺の斬撃の勢いは止まらない。そのまま飛ぶ斬撃はシンタロウを捉えた。かなり効いているように見えたが、それは俺も同じ事。何発も弾丸を受け止めた俺のMDSは崩壊寸前だ。だが、今が踏ん張り所だという考えが俺の意識を繋ぎ止める。

「そろそろ終わらせるか。茜力の原動力は意志そのもの。お前の意志と覚悟を乗り越えて俺は幹部になるぜ」

 シンタロウはそう言うと、明らかに先ほどの物とは違う弾を腰から取り出して空のショットガンに装填した。

(……次は何が来る!? ただの回転する弾なら切り落とせるが……今も壁を高速で回転してる弾までセットで飛ばされたら対処しきれない。)

 あれこれ考える俺に放たれた弾は、真っ直ぐに俺へ飛んできた。軌道は真っ直ぐだ。しかし、ありえない程に速い。動体視力強化でも見切れないレベルの超高速で放たれた弾は、容赦なく俺の腹に命中する。

「ヴゥ……い……ってぇ…………」

「これはスラッグ弾。要するに、散弾じゃなくて一発だけの弾だ。銃弾っていうのは大抵、ライフリングに合わせて回転しながら射出されるだろ? 俺はその、推進力を生み出すための回転を茜力で強化したんだ。ハイスピードカメラでさえ、撮るのは不可能なくらいにな」

 シンタロウはそう言って、さらに数発装填して俺に高速の弾を撃ってくる。走って逃げるが、一発が俺に命中した。俺はあまりの痛みと疲労で滑りながら倒れる。

「過去一手を焼いた試合だったぜ。もう刀を持つ体力も無いだろ」

 シンタロウはそう言って俺に近づいてくる。シンタロウの言う通り、俺はもう刀を振る気力すら尽きそうになっていた。溜めていた斬撃も使い切ってしまったし、茜力も残り僅か。だが、心臓の鼓動は速まる。

「うおおおぉぉぉーーッ!!」

 俺はすぐそこまで接近してきたシンタロウに飛びつくと、片手に廻翠刃(かいすいじん)を出してシンタロウの首元に押し当てた。勝ちを確信したが故の慢心が、俺に希望を与えてくれた。

 予想外の急襲に、シンタロウはショットガンを取り落とす。そして、俺はどんどんシンタロウのMDSを削っていった。

“バァンッ”

 乾いた音が闘技場に響き渡る。そして、俺のMDSが砕け落ちた。

「あ……え……? なに……」

 全身の力が抜けていく。薄れゆく意識の中で、シンタロウが拳銃を持っているのが見えた。

「危なかったぜ……念のために拳銃も持っておいて正解だったな。騙し討ちなんてセコいこと……あんまり好きじゃないんだけどよぉ。今回は使わせてもらったぜ。卑怯とは言うまいな」

 返す言葉も無く、俺は床に倒れ込んだ。

「さあッ!! ついに七眼が決定致しましたぁ!! 今回の幹部選別闘技大会で勝ったのは……近重(このえ) 真太郎(しんたろう)だぁぁーー!! 見事な戦いぶりでした! 数多の参加者達をねじ伏せてきた彼の強大な意志に! 皆様、拍手をォ!!!!」

 俺は今日、人生で初めて敗北を味わう。

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