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幹部選別闘技大会④

 闘技大会の初戦が行われてから5日が経過した。俺の二回戦の相手は顔も知らない契約者だったが、特段盛り上がる事もなくMDSの破壊で勝利を収めた。そして、本日は三回戦目。コレに勝てばもう決勝戦だ。そして本日のお相手は……シンジさん。

(これはどうにも厄介な事になった……さすがの俺も、明確に仲間だと認識してる相手に剣を振るうのは抵抗がある。でも勝たないと幹部になれないし、恐らくシンジさんは殺す気で来る。どうしたもんか……)

 俺は食堂で適当に飯を食べると、刀を軽く点検して控室に戻った。残っているのは四人。俺、シンジさん、知らない七眼の契約者、そしてシンタロウ……

 正直この闘技大会で一番の強敵となるのはシンタロウだと思っていたから、途中で潰れてくれるとありがたいなと思っていたんだが……どうやらそう上手くはいかなかったようだ。シンタロウは、立ちふさがる対戦相手を全てショットガンの連射で打ち砕いてきた。

(完全にイカれてやがる……何がなんでも亡き七眼を受け継ごうとしているという気概を感じるぜ……どうせシンタロウは勝ち抜く。今はシンジさんの対策を考えないとな……シンジさんの固有術は目が合った相手の五感を一秒間遮断する効果があるが、それがどういった影響を及ぼすのかが全く分からない。目も耳も、触る感覚でさえも絶たれるとどうなってしまうのだろうか…………)

 しばらく思案していると、控室にシンジさんが入ってきた。そして、見たこともないデケェ缶に入ったタバコを取り出した。

「それは何ですか……??」

「ん? あぁ、コレはgaranっていうタバコです。世界一重いタバコですよ。気合い入れる時に吸っています。今日の相手はリク君ですからね……気を引き締めないと」

「いえいえそんな……恐れ多いっす」

 そう言う俺を尻目に、シンジさんはタバコに火を付けてゆっくりと長く煙を吐いた。

「リク君……自分では気付かないかもしれませんが、あなたの成長はとても速い。いくら相手の組織の質が悪いとはいえ、レスパリ幹部と何度も会敵して生き残っている一般契約者なんてそういません。限られた状況下で適切な判断をして切り抜ける様は、私も感心していますよ」

「そう……ですかね」

「はい、自信を持ってください。それと……」

 そう言うとシンジさんはじっと目を合わせてきた。すると、突如俺の視界が暗転した。俺は酷く混乱して体を動かすが、自分が体を動かす感覚すらも感じられない。世界から自分だけが切り抜かれたような感覚になった。五億年ボタンでも踏んでしまったのか? そんなしょうもない考えが浮かんだ瞬間、俺の感覚が戻った。

「え、さっきのは……」

「私の固有術です。私だけ相手の術を知っていて、リク君は私の術をよく知らないのは不公平でしょう? 今ので大体わかりましたかね」

「はい、わかりました」

(シンジさんの方から術を開示するとは……これは恐らく、本気で行くぞという合図なんだろうな。俺も気を引き締めよう)

「さぁ!! 間もなく闘技大会の三回戦目が開始致します!!!! 幹部選別闘技大会もいよいよ後半戦となって参りましたぁ!!!! この先一体どうなってしまうのか! 最も優勝する可能性が高いとされる候補はシンタロウッ!! 彼のスラムファイアを受けきれる者は果たして存在するのか! 尽くを散弾で粉砕してきた狂人!! そんな彼に賭けた者も多いんじゃあないでしょうか! さて、そんな話もそこそこに。本日最初の対戦は……リクVSシンジィーー!! 彼らはどちらも俺の隊の人間です! 部下達の成長を見られるのを自分もとても楽しみにしております! さて! 選手は会場にお入りください!」

 その言葉で俺達は静かに立ち上がって会場入りした。その瞬間、歓声が湧き起こる。普段は比較的物静かで、温厚なイメージがある契約者の皆も今だけはアングラ格闘技の観戦者だ。俺は高鳴る心臓の鼓動を感じつつ、刀に手をかけた。シンジさんも結晶の付いた指輪を右手にスッとはめた。

「それでは両者位置に着いてぇ……始めえぇぃぃ!!!!」

 俺はその瞬間に目線を少し下に落としてシンジさんの目を見ないようにした。そして、思いっきり地面を踏みしめて跳躍すると身を捻ってシンジさんを上から切りつけた。しかし、茜術をフル活用した身体操作を使った斬撃でもシンジさんを捉えるには至らず、斬るためにシンジさんを一瞬見た時目が合ってしまった。

(あ……やっべぇ)

 俺は再び深淵の世界に引きずり込まれた。そして、感覚が戻り落下したのを認識した瞬間に見えたのは、俺に手を伸ばして術を放とうとしているシンジさん。俺はギリギリ手に持ったままの状態で維持した刀を俺とシンジさんの間に伸ばして、必死に防御しようとした。だが放たれた術は刀を持つ手にあたり、刀が吹っ飛ばされてしまった。

(まずいな……この人に汎用属性の術を運用するだけで勝つイメージが沸かないぞ)

 俺はバッと立ち上がり、ゆっくりと息を吐いた。そして、両手を重ねて床と両手の間に濫線廻廊(らんせんかいろう)を作った。

「……面白いですねぇ。私と術で勝負するつもりですか」

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