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幹部選別闘技大会③

 俺は勝利を噛み締めてボーッと天井の蛍光灯を眺めていた。

(そういや……直接手を下したのは初めてだったっけか? ま、いいや)

 控室の長椅子に座っていたシンジさんはスッと立ち上がると、机に置いてあったタバコを手に取り一本取り出して火をつけた。煙は窓を開けて外に吐いている所が、実にシンジさんらしい。

「あぁすみませんね、リク君。匂いが嫌いでしたらすぐに消しますよ」

「いえ、気にせずどうぞ。特段嫌いとかは無いです」

「そうですか……ならいい……」

 クールな雰囲気で吸うシンジさんは、独特な気配を纏っていて目の曇りが際立っている。

「……俺も一本貰えますか?」

「ん、いいですよ」

 シンジさんは吸っている分を咥えながら、さらに一本取り出して俺に手渡した。

「吸いながら火ぃ付けないと、上手く着火できないのでお気をつけて」

「あ、そうなんですね。知りませんでした」

 俺は咥えながら先端に火を近づけて、ゆっくりと吸った。すると、先端に火が灯って香ばしい煙の香りが広がる。

「ストローで飲み物吸い上げる時みたいにして、口の中に煙を溜めてからゆっくり吸い込んで肺に入れれば、失敗しづらいですよ」

 俺は無言で、それに従う。シンジさんの言う通りむせ返る事はなく、煙はゆったりと俺の口から吐き出されて窓の外の夕焼けと街の風景の境界線に溶け込んだ。

「美味いですね……何って名前ですか? これ」

「ホワイトデビルです、個人的に結構気に入ってるんですよね」

「へえー……」

「リク君も吸い始めるのなら、適当に誰かに合わせるんじゃなくて自分で選ぶと良いですよ」

「じゃあ……安くてガッと効いて、香ばしいやつが良いですね……」

「なら、CAMMELかFlip Morrisが良いんじゃないでしょうか……Flip Morrisは輸入品で国内生産ではないので、そこら辺で好みが別れると思いますので、そこは自分で試してみると良いでしょう」

「まあ、今はハマ爺の店でゆっくり酒飲むのにハマってるんで、それに慣れてきたら色々試してみましょうかね……」

「そうですね、それがいい。無理強いするようなものでもないですし」

 控室には、かなりゆったりとした空気が流れていた。そこに、ヒロのイカれた司会が流れ込む。

「さぁ〜〜ッ!! 次なる戦いのマッチアップは……シンタロウVSユウトォーーーー!!!! シンタロウは七眼隊の隊員なのでここはゼッッッッッタイに負けられない所ッ!! さて一体どうなる!? では……スタートォォォォォォ!!!!」

「うちの隊のリーダー……今更ですが超うるさいですね。盛り上がるから良いんですけど」

「そうですねー。あ、多分今出てるシンタロウって俺が幹部と戦った時に一緒だったダチですね」

「そっかー……やっぱり亡きリーダーの姿を追いかけているんでしょうかね」

 そんな会話をしながら俺達が控室でボーッとタバコを吸っていると、闘技場の方からとんでもない速度で連射される銃声が聞こえた。しかも、恐らくシンタロウのショットガンの音だ。

「おぉーーっと!! 早くも勝負が付いたッ!! 勝者は、シンタロウだぁーーーー!! 驚異的なスラムファイアは圧巻でしたッ!! もしや優勝はシンタロウかぁ? しかーし! 後日の二回戦ではこの一回戦を勝ち抜いた猛者達が揃っています! そして! 決勝では一体誰が戦うのか! 予想のつかない大番狂わせがずっと巻き起こっておりますッ!! お前らぁ! この後の試合もまだまだ見続けるよなぁ!!」

 そこで、おぉーー!!!! という野太い歓声が響き渡った。会場の熱気は怖いくらいだ。そして俺の頭から離れないのは、十眼の恐ろしい形相。近々背中刺されるんじゃないかとさえ思う。アイツは本当に味方なのか……それとも…………

「リク君、終わったらショウタと一緒に飯行きませんか? 私はもう疲れたので、闘技場抜けてササッと風呂入ってから軽く休みますが……晩飯の時に集合しませんか?」

「あぁ〜、良いっすねぇ」

「なら、とりあえず私は出ます……本当に疲れました」

「あ、お疲れ様でーす」

 シンジさんは灰皿に吸い殻を押し付けると、ユラリと控室を出て視界から消えた。

(俺もどうすっかなー……いざ幹部になったとして。そこからどうするか。全くイメージが沸かないな)

 俺はかなり短くなって熱を帯びてきたタバコを灰皿に擦り付けて火を消すと、酔ったような足取りで控室を出て照らす夕焼けを横目に見て息をついた。

(今日は何食おっかなー)

本日、誰かは存じ上げませんが午前四時に一気読みしてくださった方がいらっしゃったようです。本当に感謝致します。

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