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幹部選別闘技大会の用意

 バジリスクの纏っていた黒い瘴気は離散して消滅した。そして、元に戻ったバジリスクは先程よりも少し小さく見える。

“シュルルルルルルル……”

 バジリスクは疲労が怒りを追い越したようで、もう暴れ出さない。少し安心していると、上階から幹部の男が降りてきた。

「ようやく落ち着いたか。バジリスクよ。」

 そう言うと幹部の男はバジリスクに軽く手を添えた。すると、バジリスクは軽く吠えてどんどん小さくなりながら幹部の男の腕に巻き付いていって消滅した。

「お前……シンタロウは……?」

「あぁ、あの若いのなら上で死にかけてるぞ。まあ、別に殺す意味も無いからな。足止めだけした。無益な殺生は性に合わないのでな。では、俺はそろそろ本部に帰るとするよ。お前らのシマの近くで動くのは気が張って疲れるよ」

「待て……」

「ん? なんだ。私達の組織に入る気になったか?」

「お前……名前はなんて言うんだ」

「私の名前は観蛇(かんだ) (きざみ)だ。とは言ってもお前達の記録に名前が残ってるとは思うがな。では、また会おう」

 キザミは袖口から小さなバジリスクの頭部を出して口から瘴気を吐き出させると、その霧状の帷の中へと姿を消した。

「救護班を呼んだからシンタロウは助かると思うぞ。後は……」

 ヒロは、ふと七眼の死体に近づいてしゃがみ込む。

「……ナイアル、お勤めご苦労さま。」

 七眼の乱れた前髪を耳にかけて、ヒロは小さくそう呟いた。小さな涙が一滴だけ落ちる音が、静まり返った廃墟に響く。全く知らない人なのに……なぜだか俺は、その音に強く心を打たれた。イカれたギャング組織だと思っていたが、構成員達の絆を強く実感できたが、それが余計にこの状況を辛くしている。言いようもない気持ちになった俺達を救ったのは、突き破られた採光窓から降り立ったショウタとオウルベルドだった。

「ヒロさん、周辺の人間の避難は終わりました。ここからはどう致しますか?」

「いや、もう休もう。俺達三人でハマ爺の店行こうぜ……」

「ヒロさん、どうし……えっ」

 ショウタは七眼の死体を目にすると、黙り込んでしまった。

「そう……ですね。今夜は飲み明かしましょうか。ナイアルさんの御体は救護班に連れて帰ってもらいましょう」

「だな……」

 こうしてひとまず、俺達の緊急招集は幕を閉じた。採光窓から入る満月の明かりは、吹き抜けの中心をスポットライトのように照らしていて、ナイアルの血溜まりがゆっくりと広がっていく様子を鮮明に映し出していた。俺達がその後にチルい雰囲気で飲み明かしたのは、また別のお話。

━━━━━━━━━━━━━━━数日後━━━━━━━━━━━━━━━

 俺は十一眼隊の会議とやらに呼ばれた。事務作業室前の小会議室に入って、ヒロが来るのを待つ。ヒロを除いた隊員は計12名のようで、シンジ、ショウタ以外は知らない人ばかりだ。バディではないから仕方ない事だが。

「皆ごめん、ちょっと遅れた」

 ヒロが少し遅れて入ってきた。そして、ホワイトボードの前に立つ。

「今日皆を呼んだのは、他でもない。七眼が欠けた事によって幹部の座に空きができた。だから、幹部選出のために幹部選別闘技大会が開かれるッ!!」

 周囲の数人から「おぉっ」という声が聞こえた。俺としては何が何だかよく分からないが。

「そこで、今回はうちの隊から三人候補に出そうと思う。その三人を今から話し合って決めるぞ。誰か、立候補した者は?」

 皆が一瞬黙り込む。そして、シンジさんがスッとてを挙げた。

「俺は出たいです。良いですよね?」

「よし、とりあえずシンジは決定だな。じゃあ、他はどうする?」

「俺も出るぜ、ヒロ」

「おぉ、リクも出るか。良い野心だ」

 俺の右隣に座っていた女性隊員は明らかに、この新入りじゃ役不足だろって顔をしている。だが、ナメられては困るぜ。俺は既に激ヤバ恐竜使い、幹部候補、幹部の大蛇と戦って勝っている。俺だって十分戦えるはずだ。

「じゃ、残り一人は……」

 誰も手を挙げない。まあ、それは当たり前なのかもしれない。この組織は、基本的には平和主義を掲げている。だから、昇進してデカくなりたいだなんて思う人は少ないんだろうな……ま、俺はハルを探すために入ったんだから、強くなるために強さを求めるけどな。

「……ま、少ないのはしょうがないか。じゃ、十一眼隊から出場するのはシンジ、リクの二人で決定でいいな?」

「「「「「「「「「「「はいッ!!」」」」」」」」」」」

(あ、やっべ。俺だけ返事してねえや……まあいっか)

 そこから、今後の活動方針等のありきたりな通達を受けて会議は終了した。部屋から出ると、俺はシンジさんに声を掛けられた。

「リク君ー、意外と夢持ってんだねー」

「あ、シンジさん。そうですね、俺はハルを探すためなら何だってしますよ」

「もし……俺とリク君が戦う事になったなら、俺は例え君を殺してでも幹部になってやる。君もその気で掛かってくるんだ」

 俺の背中に少し緊張が走る。あの雨の日の戦い以来、俺はシンジさんの事が少し怖くなってしまった。

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