バジリスク④
なんとかヒロが来るまで耐えられた。だが、状況はあまり良くないようだ。
「ん? あ〜……コイツ、バジリスクか」
「知ってるのか?」
「あぁ。ウチのデータベースに記録されてるレスパリ幹部の守護獣だ。クッソ強い。そういえば、コイツのブレス吸った?」
「ちょっと吸っちまった」
「マジかー、アレ吸っちゃうと、一定時間どこにいても居場所を探知されちゃうから逃げれねえぞ」
「ヒロと俺とシンタロウなら勝てるだろ」
「シンタロウって上で戦ってるアイツか? 多分無理だと思うぞ。そこに転がってる死体は七眼だろ? 俺も正直焦ってるよ。まさかコイツが相手だとは思わなかったぜ。俺が来るまでよく耐えられたな」
「うっそだろ」
「ま、諦めるわけにはいかねえけどな」
ヒロはそう言うと、持っている銃をグルッと回して内蔵されている銃剣を出した。いつ見てもヒロの銃はどういう機構なのか全く分からない。だが、戦う意志があるのが分かって安心した。
「俺も戦うぜ」
「いや、しばらく休め。お前のMDSもう割れかけてるぞ? 自分じゃ気付いてないかもしれんけどな。ずっと固有術オンにしたまま戦ってただろ? そりゃ消費するぜ。少し休んでな、俺が時間稼ぐから回復したら溜めた分の斬撃で強烈な一撃を叩き込んでやれ」
「……わかった」
俺がそう言うと、ヒロは何も言わずバジリスクへと走り出した。俺が散々切りつけた傷はもう塞がりかけているみたいだ。すごい回復力だな、素体の性能が高いとこんなに早く回復するのか?
そして、ヒロは走りながらバジリスクへと何発か銃弾を放った。シンタロウの弾よりも数段速く、バジリスクは避けきれずに正面から受けた。
“シャアアアアアアアアアァァァァ!!!!”
バジリスクが大きく吠えた。どうやら本格的に怒らせてしまったようだ。バジリスクは小刻みに体を震わせながら紫色のブレスをゆっくりと吐いて纏い始めた。それと同時に、首周りと尻尾の羽飾りのようなものが逆立っていき、牙が少し長くなった。
「第二形態だとッ……!?」
どうやらヒロもこれを知らないようで、驚いている。それを尻目に形態変化を終えたバジリスクは、さらにゴツく禍々しい姿に変貌していた。さらに、常に黒っぽいブレスを纏っていて正にヘビの王の名にふさわしい出で立ちだ。
ヒロは本能的にバジリスクへの足を止めて後退りした。するとバジリスクは穴開きの建物に滑り込み、俺達の居る吹き抜けスペースをグルグルと周りはじめた。四方八方の壁にある穴からバジリスクの頭や尻尾が見え隠れしている
(……どこから来るのか予測がつかないな。上か? 後ろか?)
すると、移動による揺れが急に強くなった。バジリスクの姿も見えない。
「リクッ! 飛べぇ!!」
俺はその一言と同時に理解して、すぐにその場から飛び退いた。すると、さっきまで俺達が居た場所の地面に亀裂が入り、口を開けているバジリスクが飛び出してきた。ヒロが居なければここで食われてたな……
そしてヒロは避けると同時に身を捻ってバジリスクの右目に銃を撃った。見事に命中したかに思われたが、纏われた黒い瘴気に当たるとボッという音を立ててモヤに巻かれ、消滅した。
「まずいな……攻撃が当たらないのか…………?」
「あの瘴気に当たったら消されるって事なのかもしれない、十分に用心しろよ!」
ヒロは尚も攻撃の手を緩めず、バジリスクの尻尾の方へ回り込むと銃の肩当て部分を掴み思いっきり振って柄の長い斧に変形させた。そして、そのまま遠心力をつけて思いっきり切りつけた。だが、ボッという音がした後に斧が急に減速した。目を撃ち抜けなかった理由はそれか。
「この瘴気……霧状なのに粘っこい泥みたいだな。不気味だぜ」
ヒロはそう言うと、斧を引き戻して一歩身を引いた。すると、ヒロが立っていた位置にバジリスクの尾が突き刺さった。そしてバジリスクはその尾を刺さったまま振ってヒロに叩きつけた。あまりの衝撃にヒロは二階まで吹っ飛ぶ。だが、ヒロの顔は笑っている。
「なあ、リク。威力を減衰させる瘴気ってんならさぁ……お前が適任だよなぁ!!」
「おうよ!!」
そう、俺の茜力は既に回復しているッ! 鍛えてもらった時に回復方法も心得たおかげだ。俺は走ってバジリスクに向かう。バジリスクは尻尾を俺に向かって縦に振り下ろした。普通なら威力を消されてそのまま潰されるだろう。だが、俺の一撃は一味違うぜ。
俺が振り上げた一撃は、しっかりと威力を保ったままバジリスクのガラス質の尻尾にヒットして打ち砕いた。さらに、俺は溜めた分の斬撃エネルギーを困惑しているバジリスクの頭部へと放った。
すると瘴気が俺の飛ぶ斬撃エネルギーに一点集約されて、完全に打ち消されてしまった。だが、流石に瘴気を消費しすぎたのか、羽飾りやガラス質の甲殻が元に戻っていった。第二形態の解除に成功したようだ。




